結婚相談所の開業ガイド|特定商取引法の書面義務・連盟とFCの違い・集客【2026年版】

記事についての開示: この記事はシタミ編集部が作成しています。記事内に自社サービス「シタミ」の紹介を含みます。特定商取引法・個人情報保護法に関する記述は2026年9月時点のe-Gov法令検索の条文本体と消費者庁の公表資料に基づいていますが、法的助言ではありません。個別の契約書面や表示が適法かどうかは、必ず消費者庁・都道府県の特定商取引法担当窓口、消費生活センター、または弁護士にご確認ください。
結婚相談所の開業には、許認可も国家資格も要りません。これは正しい情報です。開業を扱うどの記事にもそう書いてありますし、税務署に開業届を出せば個人事業主として始められます。
ただし、「許認可が要らない」ことと「規制がない」ことは別です。結婚相手紹介サービスは、特定商取引法が指定する特定継続的役務提供の7業種のひとつです。エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室と並ぶ、法律が名指しで消費者保護を上乗せしている業種のひとつが結婚相談所なのです。
該当する契約では、契約前に概要書面、契約後に契約書面を交付する義務が生じます。交付しなかった場合や、法定の記載事項が欠けていた場合の罰則は、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(併科もあり得ます)。8日間のクーリング・オフも、期間経過後の中途解約と精算額の上限も、法律が決めています。
この記事は結婚相談所を探している方向けではなく、これから結婚相談所を開業する方・すでに運営していて契約書類やサイトを見直したい方のための実務ガイドです。何が義務で何が任意か、いくらかかり何から着手するかを、条文と省令の一次情報にあたって整理しました。
この記事でわかること
- 結婚相談所の開業に許認可は要らない。難しいのは「開業」ではなく「契約の設計」。該当ラインは期間2か月超・かつ5万円超(特定商取引法第41条第1項第1号、施行令第24条、別表第四第七項)で、料金プランの組み方で決まる
- 該当すると、契約前の概要書面11項目と契約後の契約書面の交付義務が生じる。書面には赤枠赤字で書くべき箇所と、8ポイント以上という文字サイズの指定まで省令で決まっている
- 中途解約時に請求できる上限は法定。役務提供開始後は「提供済みの対価+2万円か契約残額の20%のいずれか低い額」、開始前は3万円まで。これを超える違約金の特約は無効
- ホームページの表示は誇大広告の禁止(第43条)の射程で、省令が9つの項目を名指ししている。「成婚率」は2号の「役務の効果又は目的」に、「お見合い料・成婚料」は9号の「4号以外に負担すべき金銭」に当たる
- 入会金など5万円を超える前払いを受けるなら、貸借対照表・損益計算書・事業報告書を事務所に備え置き、会員の閲覧請求に応じる義務がある(第45条)。拒めば100万円以下の罰金
- 連盟にデータを預けて相互紹介する形態は、個人情報保護法の共同利用に当たり得る。5項目を本人が容易に知り得る状態に置く必要があり、実務上はプライバシーポリシーへの掲載で対応する
結婚相談所の開業は「資格不要」だが「無規制」ではない
結婚相談所の開業難易度とは、手続きの複雑さではなく、契約と表示をどこまで法律に合わせて設計できるかで決まります。参入の門は開いていますが、開いた先に消費者保護法制が待っている構造です。
開業手続きそのものは、たしかに軽い
まず、一般に説明されているとおりの部分を確認します。
| 項目 | 結婚相談所の場合 |
|---|---|
| 許認可 | 不要 |
| 国家資格 | 不要 |
| 個人事業主の開業手続き | 税務署へ開業届(所得税法第229条) |
| 法人の場合 | 設立登記 |
| 店舗 | 必須ではない。自宅・シェアオフィス・オンライン完結も可能 |
| 民間資格 | 任意。連盟や協会が独自に認定するものがある |
開業届の提出期限には注意が必要です。以前は「開業から1か月以内」でしたが、2026年1月1日施行の改正で、所得税法第229条は届出書を「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」提出するよう改められました(出典: 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)。「1か月以内」と書かれた解説は改正前の情報です。なお、従業員を雇って給与を払う場合の給与支払事務所等の開設届出(同法第230条)は、現在も開設から1か月以内が期限の別の手続きです。
もっとも、開業届は青色申告承認申請とセットで早めに出しておくほうが実務上は有利です。青色申告の承認申請には、同法第144条が定める「その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに……業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)」という別の期限があり、こちらを逃すとその年は青色申告ができません。期限の性質が違うだけで、「早く出すべき」という結論は変わりません。
開業手続きそのものが軽いことに変わりはありません。問題は次からです。
結婚相手紹介サービスは特定商取引法の7業種に入っている
特定商取引法は、特定継続的役務提供という類型を設けて、一定の役務に消費者保護の上乗せをしています。対象となるのは政令で定める7つの役務だけで、消費者庁は次のように整理しています(出典: 消費者庁「特定継続的役務提供」, no-trouble.caa.go.jp)。
| 役務 | 期間要件 | 金額要件 |
|---|---|---|
| エステティック | 1か月超 | 5万円超 |
| 美容医療 | 1か月超 | 5万円超 |
| 語学教室 | 2か月超 | 5万円超 |
| 家庭教師 | 2か月超 | 5万円超 |
| 学習塾 | 2か月超 | 5万円超 |
| パソコン教室 | 2か月超 | 5万円超 |
| 結婚相手紹介サービス | 2か月超 | 5万円超 |
この7業種は限定列挙です。たとえばネイルサロンや音楽教室は含まれていないため、法定の中途解約権や書面交付義務は原則として生じません(ネイルサロン側の整理はネイルサロンのホームページ制作ガイド、教室業側はピアノ教室のホームページ制作ガイドで扱っています)。結婚相談所は、その逆側に立っています。列挙されている7つのうちのひとつなのです。
条文上の名称は「結婚相手紹介サービス」ではなく、「結婚を希望する者への異性の紹介」です(特定商取引法施行令 別表第四第七項)。消費者庁のガイドが使う「結婚相手紹介サービス」は分かりやすさのための呼び名で、法令の文言はこちらです。看板に「結婚相談所」と書いているか「婚活サポート」と書いているかは関係ありません。判定されるのはやっている役務の中身です。
あなたの状況別・最初に着手すべきこと
開業準備のどこにいるかで、優先順位が変わります。
| 状況 | 最初に着手すべきこと | 後回しにしてよいこと |
|---|---|---|
| これから開業する(未契約) | 料金プランの期間と金額を決め、特定継続的役務提供に該当するかを判定する | 屋号・ロゴ・サイトのデザイン |
| 連盟・FCへの加盟を検討中 | 本部が提供する契約書式が概要書面・契約書面の要件を満たしているかを確認する | 会員数の多寡の比較 |
| すでに開業していてサイトがない | 契約書類の適法性を先に点検し、そのうえで料金・解約ページを作る | ブログ・SNSの運用 |
| すでに開業していてサイトがある | 料金表示と成婚実績の表示を第43条と省令9項目に照らして点検する | デザインのリニューアル |
| 5万円超の入会金を先に受け取っている | 財務書類の備置きと閲覧対応の体制(第45条)を作る | 集客施策 |
この記事は上から順に読める構成にしていますが、急ぐ場合は該当する行の章から読んでください。
特定継続的役務提供に該当するかを最初に判定する
該当するかどうかは、事業者が選べません。契約の期間と金額で機械的に決まります。逆に言えば、料金プランの設計時点で該当・非該当が決まるということです。ここを開業前に判定しておくと、後から契約書類を全面的に作り直す事態を避けられます。
該当ラインは「2か月超」かつ「5万円超」
条文の構造は3段になっています。
- 特定商取引法第41条第1項第1号: 役務提供事業者が、特定継続的役務を政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方が政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約
- 同法施行令第24条第1項・別表第四第七項: 「結婚を希望する者への異性の紹介」の期間は二月
- 同法施行令第24条第2項: 金額は五万円
つまり、期間が2か月を超え、かつ支払額が5万円を超える契約が該当します。「超える」なので、ちょうど2か月・ちょうど5万円は含みません。
金額は入会金だけを見るのではなく、その契約に基づいて支払うことになる金銭の総額で判断します。入会金3万円・月会費1万5千円・6か月契約なら、総額は12万円で期間は6か月ですから、どちらの要件も超えます。
ここで注意したいのが、「前払いだから該当する」という説明を見かけることです。これは要件の取り違えです。 該当性は期間と金額で決まるのであって、前払いか後払いかは条文の要件に入っていません。前払いが効いてくるのは、後述する第45条(書類の備付け)の場面です。
料金プラン別の該当判定表
実際にありがちなプランで判定すると次のようになります。
| 料金プランの例 | 期間 | 支払総額 | 該当するか |
|---|---|---|---|
| 入会金3万円+月会費1万5千円・12か月 | 12か月 | 21万円 | 該当する |
| 入会金なし・月会費1万円・6か月 | 6か月 | 6万円 | 該当する |
| 入会金10万円+成婚料20万円・期間の定めなし(自動更新) | 2か月超になり得る | 5万円超 | 該当し得る(実質の提供期間で判断) |
| 単発のお見合いセッティングのみ・1回3万円 | 単発 | 3万円 | 該当しない(期間・金額とも不足) |
| 月会費8千円・2か月のみの短期プラン | 2か月 | 1万6千円 | 該当しない(期間が「超える」に達しない) |
| 月会費3万円・2か月のみの短期プラン | 2か月 | 6万円 | 該当しない(金額は超えるが期間が不足) |
| 婚活相談のみ(異性の紹介をしない)・6か月10万円 | 6か月 | 10万円 | 該当しない(「異性の紹介」に当たらない) |
最後の行は判断が微妙になりやすい部分です。カウンセリングや自己分析だけを提供し、異性を紹介しないサービスは、条文の「結婚を希望する者への異性の紹介」に当たりません。ただし、実際には途中から紹介に踏み込む運用になりやすく、契約書の記載と実態がずれた時点で、実態のほうで判断されます。紹介をしないと決めたなら、そのことを契約書と料金ページの両方に明記してください。
「該当しない設計にする」という選択肢と、その代償
理屈のうえでは、期間を2か月以内に区切る、あるいは金額を5万円以下に抑えれば、特定継続的役務提供の適用を避けられます。実際にそうしている事業者もあります。
ただし代償があります。婚活は成果が出るまでに時間がかかる役務です。期間を2か月に区切れば、会員は2か月ごとに継続を判断することになり、更新のたびに離脱の機会が生まれます。金額を5万円以下に抑えれば、1件あたりの売上が下がり、必要会員数が増えます。規制を避ける設計は、事業モデルそのものを縮める設計でもあるということです。
そして、2か月契約を機械的に更新し続けて実質的に2か月超の役務提供を続ける場合は、前掲の判定表の「期間の定めなし(自動更新)」と同じく、実態のほうで判断され得ます。形式を短く刻むこと自体が安全弁になるわけではありません。
多くの場合、該当することを前提に書類と表示を整えたほうが、結果的に運営は楽になります。以下はその前提で進めます。
該当したときに発生する5つの義務
特定継続的役務提供に該当すると、事業者側に義務が5つ発生します。順に見ていきます。すべて条文と省令にあたって確認しています。
① 契約前に交付する「概要書面」の11項目
契約を締結しようとするときは、締結するまでに、契約の概要を記載した書面を交付しなければなりません(第42条第1項)。記載事項は施行規則第92条第1項第1号が定めており、結婚相談所の場合は次の11項目です。
| # | 記載事項 | 結婚相談所での中身 |
|---|---|---|
| イ | 事業者の氏名または名称、住所、電話番号(法人は代表者の氏名) | 屋号だけでは足りない。個人事業なら本名と住所 |
| ロ | 提供される役務の内容 | 紹介の方法、お見合いの設定、面談の頻度など |
| ハ | 購入する必要のある商品がある場合はその商品名・種類・数量 | 指定の物品の購入を入会の条件にしている場合(写真撮影などの役務は含まない) |
| ニ | 役務の対価その他支払わなければならない金銭の概算額 | 入会金・月会費・お見合い料・成婚料の見込み合計 |
| ホ | ニの支払の時期と方法 | 入会時一括か月額課金か。クレジット決済や分割払いを用意するならその旨 |
| ヘ | 役務の提供期間 | 12か月などの契約期間。自動更新の有無まで書く |
| ト | クーリング・オフに関する事項(第48条第1項〜第7項) | 起算日は契約書面を受領した日。書面でも電磁的記録でも解除できる |
| チ | 中途解約に関する事項(第49条第1項・第2項・第5項・第6項) | 開始前は3万円、開始後は提供済み対価+2万円か契約残額20%の低い方が上限 |
| リ | 割賦販売法上のローン提携販売等による場合の抗弁の接続 | 分割払いを用意している場合 |
| ヌ | 前払取引を行うときは、前受金の保全措置の有無と、講じている場合はその内容 | 5万円超を先に受け取る場合は必ず書く |
| ル | 特約があるときはその内容 | 休会制度、紹介人数の保証、成婚料の免除条件など |
さらに書面の作り方まで省令が指定しています。書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載し(同条第2項)、日本産業規格Z8305に規定する8ポイント以上の文字と数字を用いること(同条第3項)です。「読みやすくしてください」という趣旨の話ではなく、省令の条文にそう書かれています。
ヌの「前受金の保全措置」は見落とされやすい項目です。入会金を先に受け取るなら、保全措置を講じているか否かを書かなければなりません。講じていない場合に「講じていない」と書くのは義務違反ではありません。書かないことが違反です。
② 契約後に交付する「契約書面」
契約を締結したら、遅滞なく、契約の内容を明らかにする書面を交付します(第42条第2項)。法律が第1号から第7号まで柱を立て、施行規則第93条・第94条が中身を詰めています。
概要書面との実務上の違いは3点です。
- 金額が概算額ではなく確定額になる。しかも施行規則第94条第1項第1号は、入会金・月会費その他の対価を費目ごとの明細とその合計で書けと指定しています。「一式20万円」ではなく、内訳を書く必要があります
- 契約締結を担当した者の氏名と締結年月日が必須になります(規則第93条第2項第2号・第3号)
- クーリング・オフの説明が、省令の指定した内容で赤枠赤字になります(規則第94条第1項第2号、同条第3項)。中途解約(同項第3号)は書くべき内容が省令で指定されているものの、赤枠赤字の指定対象には含まれていません。なお「書面の内容を十分に読むべき旨」も赤枠赤字です(同条第4項)
規則第94条第1項第2号は、クーリング・オフについて書くべき内容をイからヲまで12項目にわたって指定しています。「8日以内に解約できます」の一行では足りません。解除の効力が通知を発した時点で生じること、事業者は損害賠償や違約金を請求できないこと、すでに役務を提供していても対価を請求できないこと、受領した金銭を速やかに返還することまで、書面に書く必要があります。
③ 誇大広告の禁止と、規制される9項目
第43条は、広告をするときに「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁じています。対象となる事項は施行規則第103条が9つ挙げています。ホームページの表示は、そのままこの9項目の射程に入ります。
| # | 規制される事項 | 結婚相談所のサイトで該当する箇所 |
|---|---|---|
| 1 | 役務の種類または内容 | サービス紹介ページ、サポート内容の説明 |
| 2 | 役務の効果または目的 | 成婚率、成婚実績、「1年以内に結婚できる」といった訴求 |
| 3 | 国・地方公共団体・著名な法人や個人の関与 | 自治体との連携、認証マーク、著名人の推薦 |
| 4 | 役務の対価 | 料金表 |
| 5 | 対価の支払の時期・方法 | 支払方法の案内 |
| 6 | 役務の提供期間 | 契約期間、活動期間の説明 |
| 7 | 契約の解除に関する事項 | 解約ページ、返金ポリシー |
| 8 | 事業者の氏名または名称、住所、電話番号 | 会社概要、運営者情報 |
| 9 | 4号以外に負担すべき金銭があるときは、その名目と額 | お見合い料、成婚料、オプション費用、更新料 |
2号と9号が、実際にトラブルになりやすい2つです。詳しくは後の章で扱います。
なお第43条の2により、主務大臣は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出しない場合は、指示(第46条第1項)と業務停止命令(第47条第1項)の適用については誇大広告に該当するものとみなされます。みなしの射程は行政処分の判断に限られ、罰金には及びません。成婚率を出すなら、その計算根拠を手元に用意しておく必要があるということです。
④ 前払いを受けるなら財務書類の備置きと閲覧対応
これは同業のサイトでもほとんど説明されていない義務です。
第45条第1項は、**特定継続的役務提供に先立って5万円を超える金銭を受領する取引(前払取引)**を行うときは、業務および財産の状況を記載した書類を、契約に関する業務を行う事務所に備え置かなければならないと定めています。5万円という金額は施行令第27条が定めています。
書類の中身は施行規則第105条が指定しています。
- 貸借対照表、損益計算書、事業報告書(会社以外の者はこれらに準ずる書類)
- 事業年度ごとに、当該事業年度経過後3か月以内に作成し、事務所に遅滞なく備え置く
- 備え置いた日から起算して3年保管する
さらに第45条第2項により、前払取引の相手方(=会員)は、この書類の閲覧を求め、または事業者の定める費用を払って謄本・抄本の交付を求めることができます。
入会金5万円超を先に受け取る料金体系は、結婚相談所ではごく一般的です。その場合、自分の相談所の決算書を会員に見せられる状態にしておく義務があるということになります。個人事業であっても、これらに準ずる書類を用意する必要があります。
罰則も付いています。書類を備え置かなかった場合や不正な記載をした場合は100万円以下の罰金(第72条第1項第7号)、正当な理由なく閲覧や謄本交付を拒んだ場合も100万円以下の罰金です(同項第8号)。
⑤ クーリング・オフ8日間と、中途解約の精算上限
契約を結んだ会員は、契約書面を受領した日から起算して8日を経過するまで、書面または電磁的記録により契約を解除できます(第48条第1項)。「電磁的記録により」は2022年施行の改正で加わったもので、メールでの通知も有効です。
クーリング・オフされた場合、事業者は次のことができません。
- 損害賠償や違約金の支払を請求すること(第48条第4項)
- すでに役務を提供していても、その対価その他の金銭の支払を請求すること(同条第6項)
- 受領済みの金銭を返さないこと。同条第7項は「速やかに、これを返還しなければならない」と定めており、契約書面にはその全額を返還する旨を書く必要があります(規則第94条第1項第2号ヘ)
8日を過ぎた後は、中途解約の局面になります。第49条第1項により、会員は将来に向かって契約を解除できます。ここで重要なのが、事業者が請求できる金額に法定の上限があることです(第49条第2項、施行令第30条・第31条、別表第四第七項)。
| 解約のタイミング | 事業者が請求できる上限 |
|---|---|
| 役務提供開始後 | 提供された役務の対価に相当する額 + 2万円か「契約残額の20%」のいずれか低い額 |
| 役務提供開始前 | 3万円 |
いずれも、これに法定利率による遅延損害金の額を加算した金額が上限になります(第49条第2項柱書)。
「契約残額」とは、契約に係る役務の対価の総額から、提供された役務の対価に相当する額を控除した額です(別表第四)。
具体例で見ます。入会金3万円+月会費1万5千円・12か月契約(総額21万円)で、4か月経過時点で解約された場合を考えます。提供済み分の対価が仮に9万円なら、契約残額は12万円です。20%は2万4千円ですが、上限は「2万円か契約残額の20%のいずれか低い額」なので2万円が上限になります。事業者が請求できるのは、提供済み対価9万円+2万円=11万円までです。
そして第49条第7項により、これに反する特約で会員に不利なものは無効です。契約書に「中途解約の場合、支払済みの入会金は返金しません」と書いても、その定めが上限を超えるかぎり効力を持ちません。書いてあるから大丈夫、にはなりません。
比較のために触れておくと、この「2万円か契約残額の20%の低い方」という水準は7業種のなかでも厳しい部類です。語学教室とパソコン教室は「5万円か契約残額の20%の低い方」、エステティックは「2万円か契約残額の10%の低い方」です。結婚相手紹介サービスは、開始前の上限3万円が7業種で最も高い一方、開始後の上限は低く抑えられているという組み合わせになっています。入り口で費用を回収し、途中解約では返す設計を法律が想定している、と読めます。
義務に違反したときに何が起きるか
行政処分(指示・業務停止命令)は、第42条から第45条のいずれの違反にも共通して用意されています。違いが出るのは罰則のほうです。
| 違反した条文 | 罰則 |
|---|---|
| 第42条(概要書面・契約書面の不交付、記載事項の欠落、虚偽記載) | 6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、併科あり(第71条第1号) |
| 第43条(誇大広告) | 100万円以下の罰金(第72条第1項第1号) |
| 第44条(不実告知・故意の事実不告知・威迫困惑) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、併科あり(第70条第1号)。法人には1億円以下の罰金(第74条第1項第2号) |
| 第45条(書類の備付け・閲覧拒否) | 100万円以下の罰金(第72条第1項第7号・第8号) |
行政処分には段階があります。まず指示(第46条第1項)で、これは公表されます(同条第2項)。従わない場合や、取引の公正と会員の利益が著しく害されるおそれがあると認められる場合は、2年以内の期間を限った業務停止命令(第47条第1項)に進みます。こちらも公表されます(同条第3項)。
さらに第47条の2は、業務停止を命じられた法人の役員や使用人個人に対しても、同じ期間の業務禁止を命じることができると定めています。法人をたたんで個人で同じ業務を再開する、という抜け道を塞ぐための規定です。
指示と業務停止命令はいずれも公表が義務づけられているため、屋号で検索したときに処分歴が出る状態になります。集客のことを考えると、罰金額よりこちらのほうが実質的な打撃になり得ます。
ホームページに何を書き、何を書いてはいけないか
ここからは、上で整理した義務をホームページの設計に落とします。結婚相談所のサイトは、集客の道具であると同時に、第43条の射程に入る表示物です。
「成婚率」は最も慎重に扱うべき数字
成婚率は、施行規則第103条第2号の「役務の効果又は目的」にそのまま当たります。加えて、景品表示法の優良誤認表示(第5条第1号)の対象にもなります。二重に規制されている数字だと考えてください。
厄介なのは、「成婚」の定義が業界で統一されていないことです。婚約が成立した時点を成婚とする相談所、交際が一定期間続いた時点で成婚とする相談所、退会理由の申告をもとに算出する相談所があり、分母も「全会員」「1年以上活動した会員」「特定プランの会員」などまちまちです。定義が違えば、同じ実態でも成婚率は何倍も変わります。
法律は成婚率を載せること自体を禁じてはいません。禁じられているのは、著しく事実に相違する表示と、実際より著しく優良だと誤認させる表示です。したがって載せ方の問題になります。
| 書き方 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 「成婚率No.1」(根拠の記載なし) | 危険 | 何を分子分母にしたNo.1かが示されておらず、根拠資料を求められて提出できなければ、第43条の2により行政処分の判断上は誇大広告とみなされる |
| 「成婚率80%」(定義・期間・母数の記載なし) | 危険 | 同上 |
| 「2025年に成婚退会された方 12名/同年の在籍会員 48名(当社は婚約成立を成婚と定義しています)」 | 相対的に安全 | 定義・分子・分母・期間がすべて示されている |
| 「開設以来の成婚カップル数 37組(2019年4月〜2026年8月)」 | 安全 | 率ではなく実数。定義を添えれば誤認が生じにくい |
推奨は、率よりも実数と定義を書くことです。開業直後で実績が少ないなら、無理に数字を作るより、「開設2年目のため成婚実績は3組です」と正直に書いて、サポート内容で勝負するほうが持続します。第43条の2の資料提出要求は、規模の小さい事業者を対象外にしていません。
会員数についても同じことが言えます。連盟に加盟すると「連盟全体の会員数◯万人」を訴求できますが、自社の会員数として書くと事実に相違する表示になり得ます。「当相談所は◯◯連盟に加盟しており、連盟全体で約◯万人(2026年◯月時点、連盟公表値)の中からお相手を探せます。当相談所の在籍会員は◯名です」と、主語を分けて併記してください。出典と時点も添えます。
料金ページは「4号以外に負担すべき金銭」から逆算して作る
施行規則第103条第9号は、対価以外に負担すべき金銭があるときはその名目と額を規制対象に挙げています。結婚相談所の料金は多層になりやすく、ここが最も抜けやすい箇所です。
料金ページには、次の費目のうち発生し得るものをすべて、名目と額で並べてください。
- 入会金(初期費用、登録料などの呼称を含む)
- 月会費(活動費)
- お見合い料(1回あたり)
- 成婚料
- 更新料・年会費
- オプション(写真撮影、プロフィール作成代行、セミナー参加費など)
- 必須の物品購入がある場合はその代金
- 各費目の税込・税別の別
「月会費1万5千円〜」のような下限表示だけを置いて、成婚料20万円を別ページの小さな文字で説明する構成は、9号の観点で危険です。同一ページに総額の目安を置くのが安全です。「12か月活動して成婚に至った場合の総額は◯万円程度です」というモデルケースを1つ示すと、概要書面のニ(概算額)とも整合が取れます。
解約・返金のページは、あって当然のものとして作る
第103条第7号は「契約の解除に関する事項」を規制対象にしています。解約条件を書かないこと自体が直ちに違反になるわけではありませんが、書いた内容が実際と違えば違反になります。そして契約書面にはクーリング・オフの説明を赤枠赤字で入れる義務があるのですから、サイトに書いていないほうが不自然です。
解約ページに載せる要素は次のとおりです。
- クーリング・オフ(契約書面を受け取った日から起算して8日以内、書面または電磁的記録で可能、違約金なし、受領済み金銭は返還)
- 中途解約(8日経過後、将来に向かって解除できること)
- 中途解約時の精算方法(提供済み対価の計算方法と、法定の上限額)
- 手続きの窓口と方法
ここを正直に書くことは集客上も不利になりません。むしろ、解約条件を明示している相談所のほうが、慎重な検討層には選ばれます。婚活は失敗の可能性を織り込んで検討されるサービスだからです。
結婚相談所のホームページ、できてから決めませんか?
独身証明書・収入証明は「要配慮個人情報」ではない
結婚相談所は、独身証明書、収入証明、卒業証明書といった書類を預かります。ここでよくある誤解を先に潰しておきます。
これらは個人情報保護法の「要配慮個人情報」には当たりません。 同法第2条第3項が挙げているのは、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、および政令で定める記述等です。婚姻歴の有無や年収はこの列挙に含まれていません。したがって、取得に本人同意を要するといった要配慮個人情報固有のルールは適用されません。
ただし通常の個人情報であることに変わりはなく、利用目的の特定・公表、安全管理措置、第三者提供の制限は当然に及びます。そして結婚相談所には、もっと具体的で実務的な論点があります。
連盟への会員データの提供は「共同利用」に当たり得る
連盟や協会に加盟して会員を相互紹介する形態では、自分の会員のプロフィールを他の加盟相談所が閲覧できる状態になります。これは個人データを外に出す行為です。
個人情報保護法第27条第1項は、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供することを禁じています。ただし同条第5項第3号は、共同利用の要件を満たす場合、提供を受ける者を「第三者に該当しないもの」とみなします。連盟型の相互紹介は、この共同利用の枠組みで整理できる典型的な場面です(本人の同意を得て第三者提供として扱う整理もあり得ます)。
要件は、次の5項目をあらかじめ本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置いていることです。
| # | 公表すべき事項 | 結婚相談所での記載例 |
|---|---|---|
| 1 | 共同して利用する旨 | 「当相談所は、以下のとおり会員情報を共同利用します」 |
| 2 | 共同して利用される個人データの項目 | 氏名(またはニックネーム)、年齢、居住地域、職業、年収帯、写真、プロフィール文、独身証明書の提出状況 など |
| 3 | 共同して利用する者の範囲 | 「◯◯連盟およびその加盟相談所」。範囲が本人にとって明確であること |
| 4 | 利用する者の利用目的 | 「結婚を希望する会員相互の紹介およびお見合いの設定のため」 |
| 5 | 管理について責任を有する者の氏名または名称・住所(法人は代表者の氏名) | 通常は連盟の運営法人。名称・住所・代表者名まで書く |
「本人が容易に知り得る状態」の実務的な手段が、プライバシーポリシーへの掲載です。つまり、連盟に加盟する結婚相談所のサイトには、この5項目を書いたプライバシーポリシーが要るということになります。汎用のテンプレートを貼っただけでは項目が足りません(一般的な構成はプライバシーポリシーの書き方とテンプレートで扱っています)。
さらに第27条第6項は、管理責任者の氏名・名称・住所に変更があったときは遅滞なく、利用目的や責任者を変更しようとするときはあらかじめ、その旨を本人に通知するか容易に知り得る状態に置かなければならないと定めています。連盟側の体制が変わればサイトの記載を更新する必要がある、ということです。作って終わりの文書ではありません。
なお、写真やプロフィールを連盟のシステムに登録する前に、その旨を会員に説明して同意を得る運用を併用している相談所も多くあります。共同利用の要件を満たしていれば法律上は同意が必須ではありませんが、預ける側の心理を考えれば、同意を取る運用のほうが説明しやすくなります。
オンラインで申込みが完結するなら、通信販売の表示も要る
サイト上で入会申込みから決済まで完結する形態を取る場合、その取引は通信販売にも当たります。特定継続的役務提供と通信販売は排他ではなく、両方の規制が重なります。
この場合、第11条に基づく「特定商取引法に基づく表記」(販売価格、支払時期と方法、役務の提供時期、返品や解約の条件、事業者の氏名・住所・電話番号など)が必要になり、さらに第12条の6により、申込みの最終確認画面で分量・対価・支払時期などを表示する義務も生じます。第12条の6違反には3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金という重い罰則が付いています(第70条第2号)。
ここで注意したいのは、通信販売の「郵便等」には電話やメールも含まれる(施行規則第2条第2号)ことです。サイトを見た人から電話やメールで申込みを受けて契約する形も、通信販売に当たり得ます。サイトは問い合わせの入口に留め、契約は面談の場で結ぶ設計であれば、通信販売の規制は重なりません。申込みをどの経路で受けるかは、規制が1階層増えるかどうかの分岐です。開業時の設計判断として意識しておいてください。
業態別に見る結婚相談所の設計
同じ「結婚相談所」でも、業態によってサイトに載せるべきものと注意点が変わります。5つの業態で整理します。
| 業態 | 前面に出すべきもの | サイト設計の要点 | 法務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 個人開業(連盟に加盟しない) | 主宰者自身の人物像、支援の考え方、対応可能人数 | 顔と経歴を出す。紹介できる母数が小さいことを前提に、サポートの密度で選ばれる導線にする | 紹介母数を実際より大きく見せないこと。共同利用の記載は不要な代わり、自前の個人情報管理体制を書くこと |
| 連盟に加盟 | 連盟の会員母数と、自相談所のサポート内容 | 連盟の数字と自社の数字を主語を分けて併記。連盟の検索システムの使い方を説明する | 共同利用5項目をプライバシーポリシーに掲載すること。連盟提供の契約書式が概要書面・契約書面の要件を満たすか自分で確認すること |
| フランチャイズに加盟 | 本部のブランド、研修と本部サポート | 本部提供サイトと自前サイトの役割分担を決める。独自ドメインを自分名義で持つ | 本部の広告表現をそのまま転載しても表示の責任は自分に来ること。成婚率などは自分で根拠を確認してから載せること |
| オンライン特化 | 全国対応、オンライン面談の手順、料金の安さ | 申込みから決済までの導線。所在地の記載を省略しない | 通信販売の規制が上乗せされること(第11条の表記+第12条の6の最終確認画面)。事業者の住所・電話番号の表示義務があること |
| 地域密着 | 対応エリア、地元での面談場所、地域の婚活事情 | 地域名を含むページ設計とGoogleビジネスプロフィール。実店舗があるなら外観写真 | 対応エリアを実態より広く書かないこと。「◯◯県全域対応」と書いて面談場所が1か所だけ、という状態は避けること |
自宅を事務所にする場合、住所をどこまで出すか
住所の扱いが悩ましくなるのはここです。概要書面と契約書面には事業者の住所を書く義務があり(規則第92条第1項第1号イ、第93条第2項第1号)、これは省略できません。一方、サイトへの住所掲載は、面談の場で契約する形態なら特定商取引法上の義務ではありません。サイト経由で申込みを受けるなど通信販売に当たる場合は、第11条により表示義務が生じます。自宅住所を出したくない場合は、バーチャルオフィスやレンタルオフィスを契約するのが現実的な解になります。
連盟とフランチャイズは何がどう違うのか
開業を検討する人の多くが、連盟やフランチャイズへの加盟を選択肢に入れています。ここでは特定の本部を評価せず、契約形態の違いとして何を見るべきかを整理します。
連盟・FC・独立の3類型
| 観点 | 連盟加盟 | フランチャイズ加盟 | 完全独立 |
|---|---|---|---|
| 主に得られるもの | 会員データベースへのアクセス(相互紹介) | ブランド、研修、運営ノウハウ、本部の集客 | なし |
| 屋号 | 自分で決められることが多い | 本部ブランドを使うことが多い | 自由 |
| 費用の構造 | 加盟金+月額(システム利用料) | 加盟金+ロイヤリティ | なし |
| 紹介できる母数 | 連盟の会員数 | 本部・連盟の会員数 | 自社会員のみ |
| 運営の自由度 | 高い | 制約がある場合が多い | 最大 |
境界は曖昧で、連盟を名乗りながらFC的な統制をかける本部も、FCを名乗りながら緩やかな本部もあります。名称ではなく契約書で判断してください。
ホームページの観点で見た決定的な違い
加盟すると、多くの場合は本部から相談所ページやサイトのテンプレートが提供されます。これは初期の負担を大きく下げてくれます。同時に、次の点が自前サイトと決定的に違います。
| 論点 | 本部提供のページ | 自前のホームページ |
|---|---|---|
| ドメイン | 本部ドメインのサブページやサブドメインが多い | 自分名義の独自ドメイン |
| SEOの資産 | 蓄積は本部ドメインに乗る | 蓄積は自分に残る |
| 載せられる内容 | 本部のガイドラインの範囲内 | 自分の判断(ただし法令の範囲内) |
| 料金表示 | 本部の書式に従うことが多い | 費目の並べ方を自分で設計できる(規則第103条第9号) |
| 解約したとき | ページごと消えるのが通常 | 残る。ドメインもコンテンツも自分のもの |
最後の行が、加盟を検討する段階で最も見落とされる点です。加盟中に本部ページ経由で集めた問い合わせや、そこに書き溜めたブログ記事は、契約が終われば手元に残りません。3年運営して蓄積したものが、解約と同時にゼロになることがあり得ます。
対策は単純で、加盟する場合でも独自ドメインの自前サイトを併走させることです。本部ページは本部の集客導線として使い、自前サイトには自分の言葉で書いた記事と実績を貯める。この二本立てにしておけば、加盟を続けるにせよ独立するにせよ、資産は自分に残ります。
加盟前に契約書で確認すべき7項目
本部の良し悪しではなく、自分が何を負うかを把握するための確認項目です。
- 契約期間と中途解約の条件(違約金の有無と金額、通知期間)
- 屋号とドメインの帰属(自分名義で取得できるか、本部名義か)
- 会員データの帰属(解約時に自社会員の情報を持ち出せるか、持ち出せない場合は会員にどう説明するか)
- 広告表現の制約(本部の承認が要るか、要る場合の所要日数)
- 本部が提供する契約書式が、概要書面と契約書面の法定記載事項を満たしているか(これは自分で条文と突き合わせて確認してください。書式を使っても、交付義務を負うのは自分です)
- 競業避止義務の範囲と期間(解約後に同業を続けられるか)
- 月額固定費の総額(システム利用料、ロイヤリティ、広告分担金などをすべて合算した実額)
5番は特に重要です。書面交付義務の名宛人は事業者本人であり、本部が用意した書式を使ったことは免責になりません。記載事項が欠けていれば、罰則を受けるのは加盟店です。前掲の概要書面11項目・契約書面の記載事項と、実際に配られる書式を1項目ずつ突き合わせてください。
開業資金とホームページの5年TCO
初期費用の考え方
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査によれば、全業種の開業費用は平均975万円、中央値600万円です(出典: 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」2025年12月、9ページ「4 開業費用と資金調達」)。同調査では「250万円未満」が20.1%、「250万〜500万円未満」が21.7%で、4割以上が500万円未満に収まっています。
結婚相談所は、無店舗・在庫なしで始められるため、この分布のなかでも下側に来ます。主な費目は次のとおりです。
| 費目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 連盟・FCの加盟金 | 数十万円台 | 本部により大きく異なる。研修費が含まれるかを確認 |
| 月額のシステム利用料・ロイヤリティ | 月1万〜数万円 | 固定費なので、損益分岐の会員数を左右する |
| パソコン・通信 | 10万〜20万円 | 既存の機材で足りることが多い |
| ホームページ | 0円〜150万円 | 後述 |
| 名刺・パンフレット | 数万円 | 開業当初は名刺のみで足りることが多い |
| 面談場所(自宅以外の場合) | 月数万円〜 | レンタルオフィス、バーチャルオフィス |
| 損害賠償保険 | 年数万円 | 必須ではないが、個人情報を預かる以上は検討に値する |
| 契約書類の作成・レビュー | 数万〜数十万円 | 弁護士に契約書面をレビューしてもらう費用。最も削ってはいけない項目 |
最後の行を強調しておきます。ホームページのデザインに30万円かけて契約書のレビューに0円をかける配分は、リスクの置き方として逆です。概要書面と契約書面の記載事項は省令が細かく指定しており、素人判断で作ると抜けます。抜けた状態で運営を続ければ、指示や業務停止のリスクを抱えたままになります。
ホームページの制作手段別・5年TCO
サイトの作り方は主に5通りです。5年間の総保有コスト(TCO)で比較します。ドメイン代(年1,500円程度)は共通なので含めていません。
| 手段 | 初期費用 | 年間の維持費 | 5年TCO | 向いている状況 |
|---|---|---|---|---|
| 本部提供ページのみ | 0円 | 月額に含まれることが多い | 実質0円(ただし解約で消える) | 加盟直後。単独では推奨しない |
| 無料のサイト作成ツール | 0円 | 0円(広告表示あり・独自ドメイン不可のことが多い) | 0円 | 開業前のテスト |
| ノーコードツール(有料プラン) | 0〜5万円 | 2万〜6万円 | 10万〜35万円 | 自分で更新したい |
| フリーランスに依頼 | 15万〜60万円 | 3万〜12万円 | 30万〜120万円 | デザインにこだわりたい |
| 制作会社に依頼 | 40万〜150万円 | 6万〜24万円 | 70万〜270万円 | 複数店舗、法人での本格展開 |
結婚相談所のサイトは、ページ数が多い種類のサイトではありません。トップ、サービス紹介、料金、成婚実績、主宰者紹介、よくある質問、解約について、プライバシーポリシー、お問い合わせ、これで9ページ前後です。この規模で制作会社に150万円をかける合理性は、複数店舗の展開や採用まで見据えている場合に限られます。
個人開業なら、ノーコードで自作して浮いた費用を契約書類のレビューと集客に回すのが、費用対効果の面では合理的です。費用の内訳はホームページ制作費用の相場、手段の選び方はノーコードでのホームページ作成で詳しく扱っています。制作会社に頼む場合の選び方はホームページ制作会社の選び方を参照してください。
なお、小規模事業者持続化補助金はウェブサイト関連費を対象経費に含んでいます。ただし補助金の交付申請額のうちウェブサイト関連費が占められる割合には上限があり、この費目だけでの申請はできません。条件は持続化補助金でホームページを作るで整理しています。
開業後の集客をどう組み立てるか
手段別の特徴
| 手段 | 費用 | 立ち上がり | 顧客データの所有 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| ホームページ+検索 | 制作費+維持費 | 3〜6か月 | 自社 | 中長期の土台。指名検索と相談前の下調べを受ける |
| Googleビジネスプロフィール | 0円 | 数週間 | 自社 | 地域名+結婚相談所での露出 |
| 比較・ポータルサイト掲載 | 掲載料+送客手数料 | 早い | ポータル側 | 開業直後の認知づくり |
| 本部・連盟からの送客 | 加盟費に含む | 本部次第 | 本部 | 加盟している場合 |
| SNS(Instagram・X) | 0円+工数 | 3〜6か月 | 半分(プラットフォーム依存) | 主宰者の人柄を伝える |
| 紹介・口コミ | 0円 | 成婚実績が出てから | 自社 | 最も強いが、初期には効かない |
| リスティング広告 | 月数万円〜 | 即日 | 自社 | 資金があり、CPAを管理できる場合 |
婚活領域は大手の結婚相談所やマッチングアプリも広告を出す競争の激しい分野です。開業直後に広告で競り合うのは、資金の面で不利になりやすい戦い方です。
結婚相談所を選ぶ人は、契約前に必ず相談所名で検索します。ポータル経由で知った相談所であっても、申し込む前に主宰者の名前と屋号で検索し、公式サイトを探します。ホームページの主要な役割は新規発見よりも、この下調べの受け皿です。ここに料金の全体像と解約条件と主宰者の考え方が書かれていれば信頼が積み上がり、なければ検討から外れます。
「儲からない」と言われる構造を分解する
結婚相談所の開業には「儲からない」「経営が難しい」という声がつきまといます。実際に何が難しいのかを、感情論を抜きに分解します。
理由1:固定費が先に立ち上がる。 連盟やFCの月額利用料は、会員が0人でも発生します。月額2万円なら年24万円。月会費1万5千円の会員が2人いてようやく相殺できる水準です。開業初年度に会員が数人しか集まらないと、赤字が続きます。
理由2:成果が出るまでの期間が長い。 入会から成婚までの期間は会員によって大きく異なり、1年近くかかることも珍しくありません。成婚料の比重が大きい料金体系だと、まとまったキャッシュが入るのはその後になります。月会費だけで固定費を賄える会員数に達するまでの運転資金が必要です。
理由3:市場の構造が変わった。 経済産業省の委託調査(日本総合研究所「令和4年度 未婚化・晩婚化・晩産化等の少子化対策関連サービス産業基盤調査事業 調査報告書」2023年3月、46ページ。25〜39歳の各年代の未婚者 n=1,562〜2,151)で未婚者の婚活の活動方法を見ると、結婚相談所の利用率は25〜29歳4.8%、30〜34歳6.9%、35〜39歳8.2%と年代とともに上がります。一方マッチングアプリ・サイトは37.1%→33.9%→25.1%と逆に下がり、35〜39歳では「友人の紹介」25.2%と並ぶ水準まで落ちます。どの年代でも結婚相談所はアプリの3分の1以下で、母数を取り合う勝負にはなりません。つまり、全年代に等しく効く事業ではなく、両者の差が最も縮まる30代後半に絞って届ける勝負になります。「誰にでも合います」と書くサイトは、この構造では機能しません。
理由4:単価を上げると規制が重くなる。 前述のとおり、期間2か月超・5万円超で特定継続的役務提供に該当します。単価を上げるほど書類と表示の要求水準が上がる、という関係にあります。これは避けようがないので、コストとして最初から見込んでおくのが正解です。
なお市場そのものが縮んでいるわけではありません。厚生労働省の「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」(2026年6月公表)によれば、2025年の婚姻件数は48万9,119組で、前年の48万5,092組から4,027組増えています。婚姻率(人口千対)も4.0から4.1に上がりました。ピークだった昭和47(1972)年の109万9,984組と比べれば半分以下ですが、直近では下げ止まりから微増に転じています。
結婚相談所の開業を見送ったほうがよい条件
すべての人に向く事業ではありません。次に当てはまる場合は、時期をずらすか、別の形を検討したほうが結果的に損が小さくなります。
| 条件 | なぜ見送るべきか | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 開業後12か月分の生活費と固定費の目処が立っていない | 成婚料が入るまで1年近くかかることもある構造で、運転資金が尽きる | 副業として月数名から始め、本業の収入を維持する |
| 契約書面を自分で点検する気がない | 記載事項の欠落は罰則の対象。本部の書式でも責任は自分に来る | 弁護士のスポットレビュー(数万〜数十万円)を初期費用に組み込む |
| 会員の個人情報を管理する体制を作れない | 独身証明書・収入証明を預かる。連盟利用なら共同利用の公表義務もある | 管理方法を先に決めてから開業日を設定する |
| 「成婚率No.1」のような表現を使わないと集客できないと考えている | 第43条と景表法の二重の規制対象。根拠資料の提出を求められる | 実数と定義を書く方向に発想を切り替える |
| 5万円超の入会金を取る予定だが、決算書を会員に見せたくない | 第45条で備置きと閲覧対応が義務。拒めば100万円以下の罰金 | 前払額を5万円以下に抑えるか、開示できる体制を整える |
| 紹介できる異性の母数を確保する当てがない | 会員が集まっても紹介できず、中途解約が続く。上限額の制約で回収もできない | 連盟加盟を前提にするか、開業を後ろ倒しにする |
| 相談者の話を長時間聞くことが負担に感じる | 婚活支援の実務時間の大半は面談と伴走。向き不向きが成果を左右する | 別業態を検討する |
逆に、次の条件が揃っているなら向いています。人の話を継続的に聞ける、1年スパンで収支を見られる、書類の細かい確認を面倒がらない、そして自分が支援したい会員像を具体的に言葉にできる。この4つです。
まとめ|契約を設計してからサイトを作る
結婚相談所の開業は、許認可の面では確かに軽い事業です。しかし、結婚相手紹介サービスは特定商取引法が名指しした7業種のひとつであり、期間2か月超・5万円超の契約には、概要書面と契約書面の交付義務、8日間のクーリング・オフ、法定された中途解約の精算上限、誇大広告の禁止、前払い時の財務書類の備置きと閲覧対応が課されます。
着手の順序は次のとおりです。
- 料金プランの期間と金額を決め、特定継続的役務提供に該当するかを判定する
- 該当するなら、概要書面11項目と契約書面の記載事項を条文と突き合わせて作る(可能なら専門家のレビューを受ける)
- 5万円超の前払いを受けるなら、財務書類の作成・備置き・閲覧対応の体制を作る
- 連盟に加盟するなら、共同利用5項目を書いたプライバシーポリシーを用意する
- そのうえで、料金ページ・解約ページ・実績ページを設計し、サイトを作る
- 公開後に、成婚実績や会員数の表示を第43条と省令9項目に照らして点検する
この順番を逆にすると、サイトを作り直すことになります。デザインは後から変えられますが、契約書類の不備は、締結済みの契約すべてに遡って影響します。
まずは料金プランを紙に書き出し、この記事の該当判定表と突き合わせるところから始めてください。契約の骨格が固まったら、サイトの形にする段階です。シタミでは、対話形式の質問に答えるだけでAIがホームページを生成し、プレビューまでは無料で確認できます。料金プランの一覧は料金プランからご覧ください。すでにサイトをお持ちで、表示速度・SEO・アクセシビリティ・ベストプラクティスの観点で問題がないか点検したい場合は、ホームページ品質チェッカーで自動診断できます。
なお、士業やコンサルタントとして開業する場合の設計は士業のホームページ制作ガイドや中小企業診断士の独立ガイド、一人で始める事業全般のサイト設計は個人事業主のホームページで扱っています。集客の考え方全般はホームページ集客の方法を参照してください。