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農家のホームページ制作ガイド|デザインの型・直販の表示義務・費用と補助金【2026年版】

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農家のホームページ制作ガイド|デザインの型・直販の表示義務・費用と補助金【2026年版】

記事についての開示: この記事はシタミ編集部が作成しています。記事内に自社サービス「シタミ」の紹介を含みます。食品表示・景品表示法・特定商取引法・食品衛生法・補助金に関する記述は2026年8月時点の各省庁の公式資料に基づいていますが、法的助言ではありません。個別の判断は必ず所管の窓口(食品表示は消費者庁・都道府県、営業許可は保健所、補助金は商工会議所・商工会)でご確認ください。

農家のホームページとは、農産物の販売と、生産者としての信頼を伝えるための自分の窓口です。作るかどうかよりも先に決めるべきなのは、「ホームページで直接売るのか、売るのは産直モールに任せてホームページは信頼の看板に徹するのか」という販路の設計です。ここを決めないまま作り始めると、デザインだけ立派で注文も問い合わせも来ないサイトになります。

「農家 ホームページ」で検索して出てくるのは、ほとんどが「おしゃれな農家のホームページ○選」というデザイン事例の羅列です。2026年8月時点で調べたところ、1ページ目の9件のうち7件が事例集で、残りは制作会社の紹介と動画でした。参考になる見た目は見つかりますし、制作会社のブログには費用相場の目安が、ツール提供元の記事には作り方の手順が部分的に載ってもいます。

ただし、上位10件のいずれも、直販に踏み込んだときに発生する表示義務や営業許可、補助金の可否、そして「自社で売るか、モールに任せるか」の判断軸には触れていません。この記事はその空白を埋めるため、制度を一次ソースにあたって整理しました。

この記事でわかること

  • 上位に並ぶ「おしゃれな農家HP」は4つの型に整理できる。作物・単価帯・売り方でどの型を選ぶかが変わる
  • どの型でも共通して必要な必須コンテンツは9項目。なかでも旬のカレンダーは費用対効果が突出して高い
  • 最初の分岐は「自社サイトで売る/モールに出品する/併用」の3択。検索上は自社ECが不利という実データがある
  • 作り方は5手段。初期0円〜500万円、5年総額でも数万円〜800万円と幅が大きい
  • ネット直販に踏み込むと食品表示・有機JAS・景表法・特商法・食品衛生法が関わる。「無農薬」はガイドライン上の表示禁止事項で景表法リスクに直結し、加工品は営業許可が必要になる
  • 小規模事業者持続化補助金は「系統出荷による収入のみの個人農業者は対象外」。直販や加工に踏み出すかどうかが補助金の可否にも直結する
  • 農繁期に更新が止まるのは構造的な問題。止まっても劣化しない情報設計で対処する

農家のホームページでよく見る4つの型|自分に合う型を選ぶ

参考サイトを何十件も眺めても選べないのは、並んでいる事例が「見た目」で分類されているからです。実際には、誰に何を売るかでホームページの型は4つに整理できます。販路そのものの判断は次章で扱いますが、先に型の地図を持っておくとその判断が速くなります。

①ブランド訴求型|こだわりと世界観で単価を上げる

写真を大きく使い、栽培へのこだわりや生産者の考え方を前面に出す型です。果樹や高糖度トマトなど単価を上げたい作物と相性が良く、贈答需要も取り込めます。写真の質がそのまま売上に効くため撮影に予算を割く価値がある一方、素材の準備に最も手間がかかる型でもあります。

②直販ショップ型|サイトそのものが売り場

商品一覧・カート・決済を備え、ホームページが販売チャネルそのものになる型です。定期便やセット販売、リピーターとの関係づくりに向きます。手数料を抑えて利益率を上げられる反面、集客をすべて自分で背負うことになります。この型を選ぶなら、後述する表示義務とECサイトの作り方の運用設計を先に押さえてください。

③信頼の看板型|取引先・行政・地域に向けた名刺

飲食店や小売への卸、行政や農協とのやり取り、地域での認知を目的にした型です。サイト上の販売機能は持たず、沿革・生産品目・出荷可能時期・連絡先・所在地を整理して置きます。ページ数が少なく費用も抑えられ、更新頻度が低くても劣化しにくいため、個人・小規模の農家が最初に作る型として最も現実的です。

④体験・観光型|来園と予約を増やす

観光農園、収穫体験、直売所への集客を目的にした型です。営業カレンダー・料金・アクセス・予約導線が最重要で、シーズン中の更新頻度が高くなります。地名を含む検索やGoogleマップからの流入が売上に直結するため、地域名を含むページ設計が要ります。

型の選び方早見表

型向いている作物・業態必要ページ数の目安更新頻度費用感
①ブランド訴求型果樹・高付加価値野菜・米5〜10低〜中中〜高(撮影費が効く)
②直販ショップ型定期便・セット販売向き10〜高中〜高
③信頼の看板型業務用出荷中心・法人3〜7低低〜中
④体験・観光型観光農園・直売所併設5〜10シーズン中は高中

複数を兼ねることはできますが、優先順位は必ず1つに絞ってください。トップページのファーストビューで「買える場所」と「見学の予約」と「卸のご相談」を同時に主張すると、どれも伝わらなくなります。

農家のホームページに載せる9つの必須コンテンツ

型が決まったら、載せる情報を決めます。どの型でも共通して必要なのは次の9項目です。

#コンテンツなぜ必要か手を抜くと起きること
1生産品目と旬のカレンダー「今それが買えるのか」が最大の関心事問い合わせの半分が「今ありますか?」になる
2栽培方法・こだわり価格差の理由を説明する唯一の場所相場より高い理由が伝わらず選ばれない
3生産者・農園の紹介顔が見えることが直販の前提「本当に農家か」を疑われる
4圃場・作業風景の写真文章より速く信頼を作る素材サイトの写真だと嘘っぽくなる
5所在地・エリア地域検索とマップ流入の受け皿「◯◯市 農園」で見つけてもらえない
6購入・注文の方法買い方が分からないと離脱する電話だけの導線で機会損失が起きる
7問い合わせ手段卸・取材・体験の入口取引の相談が届かない
8出荷・配送の考え方生鮮ゆえの不安を先回りで消す「いつ届くのか」の質問が集中する
9法定表示・事業者情報販売するなら必須(後述の表示ルール・手続きの2章を参照)表示不足のまま販売してしまう

問い合わせフォームを置く場合は、この9項目に加えてプライバシーポリシーが必要です。氏名や連絡先を取得して顧客管理に使う時点で、個人情報保護法上の個人情報取扱事業者として利用目的の公表や通知が求められます。利用目的・管理方法・問い合わせ窓口を記したページを併せて用意してください。

「旬のカレンダー」は農家のホームページで最も効くページ

9項目のなかで費用対効果が突出して高いのが旬のカレンダーです。品目ごとに収穫・出荷の時期を一覧にしておくだけで、「今買えるのか」という最頻出の疑問に24時間答えられます。一度作れば毎年ほぼ使い回せるため、後述する「更新できない期間があっても劣化しない構成」の中核にもなります。

写真は「作物」ではなく「作物と人と場所」を撮る

印象に残るサイトは例外なく写真が強い一方で、その写真は作物の接写だけではありません。圃場の広がり、作業の手元、パッケージング、出荷の様子が揃っていると生産の実在感が伝わります。素材サイトの汎用写真で代用すると、この実在感だけが失われます。撮影を外注する場合の相場感はホームページ制作の費用相場で整理しています。

価格の見せ方は「型」によって変える

直販ショップ型なら価格は必須ですが、信頼の看板型で卸を狙うなら、価格より「出荷可能な規格・ロット・時期」のほうが問い合わせにつながります。相手が次の行動を決めるために必要な数字は何か、という基準で選んでください。

【判断】ホームページで売るか、産直モールに置いて看板に徹するか

農家のホームページで最初に決めるべきなのは、デザインでも制作会社でもなく売る場所をどこに置くかです。選択肢は「自社サイトで売る」「モールに出品する」「併用する」の3つで、どれを選ぶかで必要なページ、費用、負う義務がすべて変わります。

ここでいうモールには2種類あります。食べチョク・ポケットマルシェ・産直アウルのような産直モールと、楽天市場・Amazonのような総合ECモールです。手数料の体系も客層も異なりますが、「自分のサイトの外に売り場を置く」点では同じ判断軸で扱えます。

まず知っておくべき不都合な事実

自社サイトで売るなら、検索で不利だという前提を持っておいてください。「農家 直売 サイト」で上位を占めているのは上記のモール群です。DataForSEOで上位ページの平均参照ドメイン数(他サイトからのリンク元の数)を見ると127件で、この記事が狙う「農家 ホームページ」の同0.3件とは桁が違います(この指標はデータベース側の更新が2023年7月時点のため、現在はさらに差が開いている可能性があります)。

つまり、「農家から直接買いたい消費者」の検索は、すでにモールがほぼ独占しています。自社ECを立ち上げて「農産物 通販」のような語で戦うのは、現実的ではありません。自社サイトで売るなら、集客はモール以外の経路(既存顧客、SNS、直売所での配布物、地名検索)から連れてくる前提で設計する必要があります。

3つの販路の比較

観点自社サイトで売るモールに出品併用
費用構造決済手数料が中心販売手数料(総合ECモールは出店料も)が上乗せ経路により変動
集客自力。検索では不利モールの集客に乗れるモールで獲得しサイトへ誘導
顧客データ自分で持てる原則モール側に残る自社分は自分で持てる
価格の主導権自分で決められる同カテゴリ内で比較されやすい自社サイトで価格を守れる
法令対応の負担すべて自分で負う出品ルールに沿えば概ね整う自社分は自分で負う

手数料の具体的な料率は、この記事では出しません。産直モールは販売手数料型、総合ECモールは出店料と販売手数料の組み合わせ型が中心で体系が異なるうえ、料率は改定されるためです。比較するときは必ず出品先の公式ページで、最新の手数料・入金サイクル・送料負担の条件を確認してください。

5つの質問で決める

  1. 年間の売上目標のうち、直販で取りたい割合は3割を超えるか。超えないならモールで十分です
  2. すでに顧客リスト(直売所の常連、贈答のリピーター、LINEやDMのつながり)があるか。あるなら自社サイトの費用対効果は一気に上がります
  3. 繁忙期に受注・梱包・発送を回す人手があるか。ないなら注文が増えること自体がリスクです
  4. 加工品を扱う予定があるか。あるなら営業許可の取得が先で、サイトはその後です
  5. 顧客と直接つながり続けたいか。自分の言葉で届けたいなら自社サイト、売れればよいならモールです

3つ以上が「はい」なら自社サイトで売る設計、それ未満なら③信頼の看板型で持ち販売はモールに任せるのが現実的な出発点です。看板型なら費用も義務も軽く、後から販売機能を足せます。

なお、自社サイトで本格的に販売する場合の構築方式の比較はECサイト構築の方式比較にまとめています。この記事では以降「農家がホームページを持つ判断」に集中します。

農家のホームページの作り方5手段|費用と5年TCOの中立比較

作り方は大きく5つです。検索上位の記事は制作会社かツール提供元が書いているため自社の手段が推されがちですが、横並びで比較します。

A. 自作(ノーコードツール)

Wix・ペライチ・Jimdo・STUDIOなどでページを組み立てる方法です。初期0〜5万円、月額1,000〜5,000円程度。旬のカレンダーや出荷状況を自分で直せるため、更新の主導権を手放さずに済みます。ツールごとの違いはノーコードでのホームページ作成と無料ホームページ作成ツールで比較しています。

B. AI自動生成

農園名・作物・こだわりなどを入力すると、AIが構成と文章とデザインの下地を作る方法です。初期0〜3万円、月額0〜3,000円程度。ゼロから書き起こす負担がなく、まず看板型を短時間で用意したい農家と相性が良い手段です。詳しくはAIホームページ作成を参照してください。

C. 農業特化の制作サービス

「農家専門」「農園に強い」を掲げるサービスです。業種の勘所を持つぶんヒアリングの負担が軽くなります。ただし初期費用に加えて月額課金のモデルが多いため、後述する5年総額で確認してください。解約時にサイトとドメインが手元に残るかも、契約前に書面で確かめる必要があります。

D. 一般の制作会社

業種を問わない制作会社への依頼です。フリーランスなら10万〜80万円、中小の制作会社で30万〜150万円、大手だと100万〜500万円以上が目安です(出典: ホームページ制作の費用相場)。自由度と作り込みでは最も強い一方、更新のたびに費用が発生することが多く、シーズンごとに情報を変えたい農家にはランニングが重くなりがちです。選定基準はホームページ制作会社の選び方にまとめました。

E. 内製(担当者を置く)

農業法人などでWebを担当するスタッフを置く方法です。自由度と反応速度は最も高い一方、人件費という形でコストが乗ります。直販とEC、採用、卸向けの情報発信を並行して回す規模、つまり通年雇用のスタッフを複数抱える段階に達していなければ、外部委託のほうが安く済みます。

5手段の比較と5年TCO

制作は一度きりでも、サイトは何年も持ち続けます。初期費用ではなく5年総額(TCO)で比べてください。

手段初期費用月額5年総額の目安更新のしやすさ相性の良い型
A. 自作(ノーコード)0〜5万円1,000〜5,000円6万〜35万円◎ 自分で即更新③④
B. AI自動生成0〜3万円0〜3,000円0〜21万円◎③
C. 農業特化サービス0〜10万円3,000〜10,000円18万〜70万円△ 依頼が必要な場合も②④
D. 制作会社10万〜500万円0〜5万円+更新費10万〜800万円△ 都度依頼①②
E. 内製人件費人件費人件費次第◎①②

月額課金型は5年で効いてきます。月8,000円なら5年で48万円。初期30万円・月額0円のサイトより高くつく計算です。「月額が安く見える」だけで選ぶと、収穫の良し悪しに関係なく固定費が乗り続けます。

【重要】商品とサイトに書く表示のルール

農産物を自分で売り始めると、農家はいくつかの法律の対象になります。ただし「サイトに全部書かないと違法」という単純な話ではなく、義務がかかる場所が法律ごとに違います。商品の容器包装にかかるもの、ホームページという「表示」にかかるもの、注文を受ける行為にかかるもの。そこを正確に押さえるのがこの章の目的です。

食品表示法|ホームページに書く義務はない。販売時の表示には義務がある

最も誤解されている点から。食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の適用範囲は食品の容器包装上であり、ECサイトの掲載は対象外です。消費者庁自身が「現状、ECサイトにおける食品表示情報の提供に関するルールは定められていない」と明記しています(出典: 消費者庁「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブックについて」令和4年〔2022年〕6月)。

つまり、商品ページに原材料や期限をそのまま載せる法的義務はありません。義務がかかるのは実際にお客様の手に渡る商品のほうです。容器包装に入れずにバラ売りするときも、名称と原産地を書いた立て札などを商品の近くに掲示する必要があります。一方、生産した場所で販売する場合(庭先販売など)は、原産地・内容量・事業者名・玄米及び精米に関する事項などの表示が不要とされています(基準第20条)。ただし名称は全面免除ではありません。りんご・もも・かんきつ類・すもも・びわ・ばれいしょ・バナナなど条文に列挙された品目を容器包装に入れて売る場合は、名称だけは表示が必要です。⚠️そしてこの特例はあくまで「生産した場所で販売する場合」なので、圃場を離れた直売所に出荷するなら対象外になります。

農産物を容器包装に入れて売る場合の義務表示は、区分ごとに次のとおりです。

区分義務表示事項
農産物(生鮮食品)名称・原産地(品目により追加あり。しいたけは原木栽培か菌床栽培かの栽培方法、ほかに放射線照射・遺伝子組換えに関する事項)
玄米及び精米名称・原料玄米・内容量・調製時期または精米時期または輸入時期・食品関連事業者の氏名または名称、住所及び電話番号
加工食品名称・保存の方法・消費期限または賞味期限・原材料名・添加物・原料原産地名・内容量または固形量及び内容総量・栄養成分の量及び熱量・食品関連事業者の氏名または名称及び住所・製造所または加工所の所在地及び製造者または加工者の氏名または名称 等

(出典: 消費者庁「食品表示ガイド 早わかり」令和7年〔2025年〕4月版)

野菜や果物は名称と原産地の2項目で済みます。米はその中間で、精米は名称・原料玄米・内容量・調製時期に加えて事業者の電話番号まで求められる5項目。加工食品になると10項目前後に跳ね上がるので、ジャムや漬物に手を広げるならアレルゲン(原材料名・添加物欄に表示)まで含めた設計が必要です。

ただし加工食品でも、栄養成分の量及び熱量は、消費税の納税義務が免除される事業者(基準期間の課税売上高1,000万円以下)が販売するものについては省略できます(食品表示基準第3条第3項)。さらに当分の間、中小企業基本法上の小規模企業者(おおむね常時使用する従業員20人以下、商業・サービス業では5人以下)が販売するものにも読み替えで適用されます(同附則第6条)。多くの小規模農家はここに該当します。ただし「ビタミン豊富」のような栄養表示をする場合や、小規模でない事業者に卸して売られる場合は省略できません。

米にはさらに別の法律が乗ります。米・米加工品を販売する事業者は生産者を含めて米トレーサビリティ法の対象ですが、直販する農家には負担が軽くなる分岐が2つあります。1つは取引記録で、記録の作成・保存が必要なのはJA・飲食店・直売所の運営者といった事業者に売るときで、一般消費者への直販(ホームページでの販売を含む)では不要とされています。もう1つは産地情報の伝達で、玄米・精米・もちは食品表示基準で産地を表示するため、米トレーサビリティ法第8条の伝達義務の対象外です。それ以外の米加工品を消費者に売る場合は産地情報の伝達が必要になり、その方法としてウェブサイトのURLや相談窓口の連絡先を示す形も認められています(そこを見れば産地が分かる旨の併記が条件)。ホームページが法令上の情報伝達手段として使える数少ない例です。(出典: 農林水産省「米トレーサビリティ法の概要」、「米トレーサビリティ制度Q&A 〜生産者編〜」問8・問13)

消費者庁のガイドブック|義務ではないが、書き方の正解がある

法的義務はない一方で、消費者庁は令和4年〔2022年〕6月に「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック」を策定しています。事業者向けの参考ツールで罰則は伴いませんが、書き方の目安として実務的です。基本方針は、①できるだけ食品表示基準に準じて情報提供する ②消費者の安全を第一に正しく分かりやすく伝える ③見やすいサイトを構築する ④問い合わせに適切に回答できる体制を整える、の4つ。なかでも役立つのは、正確に書けない情報をどう書くかの指針です。

項目ガイドブックが示す考え方農家のホームページでの書き方の例
期限情報年月日の断定が難しい場合、到着日や出荷日を起点にした「期限残表示」や「期間表示」でよい「お届けから3日以内にお召し上がりください」
産地情報季節等で産地が変わる場合は使用される可能性のある産地を併記し、変動する旨と容器包装の表示を確認する旨の注意書きを添える「時期により◯◯産・△△産。実際の産地はお届けの表示をご確認ください」
アレルギー情報独立した欄や一覧、目立つ文字で示す加工品なら独立した欄を設ける
保存方法常温・冷蔵・冷凍をマークやアイコンで示す一覧ページにもアイコンを出す

生鮮を扱う農家は「収穫してみないと確定しない」情報が多く、断定的に書けないことが弱点になりがちです。ガイドブックは断定できないことを断定せずに伝える方法を示しており、そのまま使えます。

有機JASと特別栽培|「無農薬」「有機」はホームページに書いていいのか

ここが最も事故が起きやすい部分です。

表現可否根拠
有機・オーガニック有機JAS認証がなければ不可有機JASマークがない農産物等に「有機」「オーガニック」等の表示や紛らわしい表示を付すことは法律で禁止(農林水産省)
無農薬・減農薬・無化学肥料・減化学肥料使わない特別栽培農産物に係る表示ガイドラインの表示禁止事項
農薬:栽培期間中不使用可同ガイドラインが定める正しい表記
節減対象農薬:当地比◯割減可同ガイドラインが定める正しい表記

「無農薬」が禁止された理由は農林水産省のQ&Aに明快です。生産者にとっては「栽培期間中に農薬を使っていない」という意味でも、消費者は「土壌に残留した農薬や周辺圃場から飛散した農薬を含め、一切の残留農薬を含まない農産物」と受け取ってしまい、優良誤認を招いていたという経緯です(出典: 農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」平成20年〔2008年〕6月 Q6)。

ここで誤解を2つ正しておきます。1つ目は適用範囲。このガイドラインは通信販売も対象です。「販売方法の如何にかかわらず、不特定多数の消費者に販売される農産物はガイドラインの対象になります。(中略)例えば通信販売、カタログ等による会員制販売もガイドラインの対象となります」と明記されています(同Q&A Q4)。「容器包装のラベルの話だからホームページには関係ない」という理解は誤りです。ただし同じQ4は、特定の生産者と消費者とが結び付いており栽培方法などについて相互に納得したうえで売買されている場合は対象外になる、とも述べています。

2つ目は強制力。ガイドラインは「関係者の自発的な行動によって守られる性格のもの」であり、法令ではありません(同Q&A Q8)。「サイトに『無農薬』と書いた瞬間に違法」という説明も正確ではないのです。

では、なぜ使うべきでないのか。国が「消費者に優良誤認を招く」と公式に認定した表現だからです。ホームページは景品表示法でいう「表示」にあたるため、ガイドライン違反そのものではなく景表法のリスクとして跳ね返ってきます。

なお、一括表示欄に正しい表記が確実にされている場合に限り、その枠外では「農薬未使用」「農薬無散布」も認められています(同Q&A Q6)。ただしホームページには一括表示欄が存在しないため、サイト単独ではこの条件を満たせません。容器包装に「農薬:栽培期間中不使用」を正しく表示したうえで、サイトではその事実を説明する順序で考えてください。

「自然栽培」「天然栽培」は、特別栽培農産物の表示をした場合に紛らわしい用語として禁止事項に挙げられていますが、従来からある農法で明確な基準が公表され表示の実績があるものを枠外に書く場合は除外されています(同Q&A Q7)。一律に使えないわけではないので、自分の農法が除外にあたるかを確認したうえで判断してください。

景品表示法|産地と栽培方法の表現は2024年10月から重くなった

景品表示法が禁じる優良誤認表示とは、商品の内容について実際のものより著しく優良だと示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものを指します(法第5条第1号)。農家のホームページで問題になりやすいのは、産地、栽培方法、品質、受賞歴、そして「日本一」「糖度◯度保証」といった断定表現です。

2026年時点で押さえておくべき変更があります。令和5年改正景品表示法が令和6年〔2024年〕10月1日に施行され、優良誤認表示・有利誤認表示に対する直罰(100万円以下の罰金)が新設されました(第48条)。10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者への1.5倍加算も設けられています(出典: 消費者庁「【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要」)。小規模な農家が直ちに対象になる話ではありませんが、書きすぎのコストは上がりました。線引きは単純で、確認できる事実だけを確認できる範囲で書く。これに尽きます。

避けたい書き方書き換え例
糖度◯度以上を保証昨シーズンの出荷分は糖度◯〜◯度でした(測定方法を併記)
日本一おいしい◯◯品評会で◯◯賞を受賞(年・主催者を明記)
農薬不使用で安心・安全栽培期間中は農薬を使用していません
完全無添加使用した原材料をすべて記載

加工品の「無添加」「保存料不使用」には別のルールもあります。消費者庁は令和4年〔2022年〕3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定し、容器包装の不使用表示について注意すべき10の類型を示しました。約2年の猶予を経て令和6年〔2024年〕4月以降は運用が厳格化されています。パッケージに「無添加」とだけ書くのは避け、何を使っていないのかを具体的に書いてください。

農園のホームページを、まず形にしてみる

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【重要】注文を受ける・加工するときの手続き

前章が「何を書くか・書いてはいけないか」だったのに対し、ここは「注文を受ける」「加工する」という行為に伴う手続きです。どちらもホームページを作る前に決着させておく必要があります。

特定商取引法に基づく表記|サイトで注文を受けるなら必須

ホームページで注文を受ける(=通信販売を行う)なら、特定商取引法の対象になります。多い誤解は「個人の農家だから関係ない」というものですが、特商法の「販売業者」は営利の意思をもって反復継続して取引を行う者を指し、その意思の有無は本人の認識にかかわらず客観的に判断されます。個人でも該当します(出典: 消費者庁「特定商取引法ガイド(通信販売)」)。

広告に表示しなければならない事項は次のとおりです(法第11条および施行規則第23条)。

どの農園でも必ず要るもの

  • 販売価格と送料
  • 代金の支払時期・方法
  • 商品の引渡時期
  • 申込みの撤回・契約解除に関する事項(返品特約の内容)
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 販売価格以外に消費者が負担する費用

該当するときに要るもの

  • 申込み期間の定めがあるときはその内容
  • 売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨、金額(支払総額)、契約期間その他の販売条件
  • 契約不適合責任についての定めがあるときはその内容
  • 販売数量の制限など特別な条件があるときはその内容
  • 法人が電子情報処理組織を用いて広告する場合は代表者名または責任者名
  • 電子メール広告を送る場合はそのメールアドレス

定期便のように売買契約を2回以上継続する形をとる場合、支払総額と契約期間の表示が抜けると、そのまま表示義務違反になります。当初は回数限定でも、解約通知がない限り自動更新される仕組みなら継続契約として扱われます。定期便は直販ショップ型の大きな強みなので、ここは必ず押さえてください。

もう一つ注意したいのが返品特約です。返品の可否や条件を表示していない場合、消費者は商品の引渡しを受けた日から数えて8日以内であれば、送料負担のうえで返品できます。生鮮農産物にとってこれは無視できないリスクなので、鮮度・品質の性質上どのような場合に返品を受けるのか(あるいは受けられないのか)を明確に書いておく必要があります。なお、返品特約・申込み期間・継続契約の条件・販売数量の制限などの特別な条件・電子メール広告のアドレスは、次に述べる省略措置の対象になりません。

一方、自宅と圃場が同じで住所の公開に抵抗がある場合には実務的な選択肢があります。請求があれば遅滞なく書面または電子メールで広告表示事項を提供する旨を広告に表示し、実際に対応できる措置を講じていれば、氏名・住所・電話番号の表示は省略できます(出典: 消費者庁「通信販売広告Q&A」Q15・Q17)。プラットフォームやバーチャルオフィスの住所も一定の要件下で認められています(同Q18)。ただし私書箱は「住所」として認められず、屋号だけの表示も「氏名又は名称」として認められません(同Q19・Q16)。法人化まで踏み込まずに対応できる余地があるので、先に消費者庁のQ&Aを確認してください。

なお第12条で誇大広告等が禁止されており、著しく事実に相違する表示や、著しく優良・有利と誤認させる表示は認められません。景表法と重なる部分ですが、通信販売では両方が働くと理解しておいてください。

食品衛生法|どこまでが「採取業」かで届出の要否が分かれる

ここは分岐がはっきりしています。農業における食品の採取業は営業届出の対象外で、厚生労働省が品目・行為ごとの線引きを通知で示しています。

やろうとしていること採取業の範囲か手続き
収穫した農産物の洗浄・選別・パック詰め(カットなし)○不要
皮むき・根切り・へた取り・袋詰め・冷蔵冷凍など形状変化を伴わない出荷調整○不要
4分割・8分割等したうえでラップ等で包装○不要
消費の利便性のために行う調理や切断(カット野菜・千切り・茹で野菜など)×営業届出が必要
自分で生産したものを未加工で直売(庭先・直売所(有人・無人)・通信販売など)○不要
観光農園(収穫体験の提供)○不要
精穀(精米・精麦等)とそのパック詰め○不要。ただし業として請け負って行う場合は届出の対象
農産物の天日干し・乾燥○不要
干し柿・干し芋・切り干し大根・乾燥キノコのスライス○(自分で生産した農産物が原料の場合)不要。他者から仕入れた農産物を原料にするなら届出の対象
ジャム類の製造、漬物の製造×営業許可が必要

(出典: 厚生労働省「農業及び水産業における食品の採取業の範囲について」令和5年〔2023年〕2月6日付け薬生食監発0206第2号。別紙の最終改正は令和3年4月22日付け薬生食監発0422第12号)

ポイントは2つ、加えて例外が1つあります。1つは通信販売そのものは採取業の範囲に含まれること。ネットで売ること自体が届出を生むわけではなく、何をしてから売るかで決まります。もう1つは乾燥加工の扱いが原料の出どころで変わること。干し芋や干し柿は、自分で生産した農産物を原料にするかぎり採取業の範囲で、他者から仕入れた農産物を使った時点で届出の対象に変わります。そして例外として、工程中で食品添加物を使う一次加工(かんぴょう等。あんぽ柿の硫黄燻蒸もこれに当たりえます)は、原料が自家生産でも営業届出が必要とされています。

一方、ジャムや漬物のような加工品を作って売る場合は営業許可が必要です。令和3年〔2021年〕6月1日施行の改正で営業許可業種は32業種に再編され、そのなかに漬物製造業と密封包装食品製造業が含まれています(出典: 愛知県「営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設について」)。許可・届出の対象施設では原則としてHACCPに沿った衛生管理と食品衛生責任者の設置が必要です。収穫体験そのものは採取業の範囲ですが、採れた作物を園側が調理して提供するなら飲食店営業などの許可が必要になります。

該当する業種は品目・製造方法・原料の出どころで変わるため、必ず着手前に所管の保健所に相談してください。ホームページに「ジャムも販売予定」と書いてから許可が下りないと分かる順序は避けたいところです。加工品まで手を広げる場合は飲食店のホームページ作成も参考になります。

公開前チェックリスト

  • 「有機」「オーガニック」と書くなら有機JAS認証を取得しているか
  • 「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」を使わず、「農薬:栽培期間中不使用」等の正確な表記にしているか
  • 糖度・品評会・受賞歴に根拠(測定方法・年・主催者)を添えているか
  • 注文を受けるなら、特商法に基づく表記のページがあるか
  • 返品特約と申込み期間を明記しているか(返品特約を書かないと8日間の返品が可能になる)
  • 定期便を扱うなら、支払総額と契約期間を表示しているか
  • 事業者情報を表示しているか。省略するなら請求への対応措置を講じ、その旨を表示しているか
  • 問い合わせフォームを置くなら、プライバシーポリシーがあるか
  • 加工品を扱うなら、保健所で必要な営業許可・届出を確認済みか(乾燥加工は原料の出どころで扱いが変わる)
  • 容器包装のラベルに区分に応じた義務表示をしているか(生鮮は名称・原産地の2項目、精米は5項目、加工食品は10項目前後)
  • 米を事業者にも売るなら、米トレーサビリティ法の取引記録を作成・保存しているか(消費者への直販のみなら不要)

業態別・農家ホームページの必須要素マトリクス

同じ「農家のホームページ」でも、業態によって必要なものは変わります。以下は業態別の要点です。

業態推奨する型必須で追加されるもの注意点
個人農家(系統出荷中心)③信頼の看板型生産品目・出荷可能時期・連絡先サイトで注文を受けなければ特商法の広告表示義務は生じない
個人農家(直販あり)①ブランド訴求型+②直販ショップ型特商法に基づく表記・返品特約・プライバシーポリシー事業者情報の出し方を先に決める
農業法人③信頼の看板型+採用ページ会社概要・沿革・許認可・採用情報取引先審査を意識した情報整理が要る。農事組合法人は持続化補助金の対象外(後述)
観光農園・体験④体験・観光型営業カレンダー・料金・予約導線・アクセスネット予約を受けるなら役務の通信販売として特商法の表示が必要
6次産業化(加工品あり)②直販ショップ型営業許可の取得・加工食品の表示・アレルゲンサイト公開より許可取得が先。栄養成分は小規模事業者なら省略可

注意したいのは、食品表示の義務はサイトの機能ではなく、実際の販売行為に伴って生じるという点です。看板型にしても、直売所や庭先で容器包装に入れた農産物を売るなら、その商品には表示が必要です。逆に直販ショップ型ではサイト側と商品側の義務が両方かかります。「サイトに書くこと(特商法に基づく表記・プライバシーポリシー)」と「商品に貼ること(食品表示のラベル)」は別物として、それぞれ用意してください。

個人で開業したばかりで、屋号や確定申告まわりも整理したい場合は個人事業主のホームページの作り方もあわせて確認してください。

農家のホームページ制作に使える補助金

「農家 ホームページ 補助金」は関連検索にも現れる需要の高いテーマですが、検索上位のどの記事も答えていません。ここには農家固有の分岐があるためです。

小規模事業者持続化補助金|対象になるかどうかが最初の関門

ホームページ制作費に最も現実的に使えるのは、小規模事業者持続化補助金です。ただし公募要領には、農業者について明確な線引きがあります。

「系統出荷による収入のみである個人農業者」は補助対象になりません。

ただし個人農業者であっても、農作物の加工や農作物を用いた料理の提供等を行う事業については、その加工や料理の提供等に必要な経費は補助対象となります(農作物の生産自体に必要な経費は補助対象外)。また、農事組合法人も補助対象外です。

(出典: 小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>第20回公募要領 第8版「2.補助対象者」)

つまり、JAへの系統出荷だけで収入を得ている個人農家は、この補助金を使えません。逆に言えば、直販や加工、体験提供に踏み出して系統出荷以外の収入を持つことが補助金を使う入口条件になります。「ホームページで売るか、産直モールに置いて看板に徹するか」の判断と、補助金の可否は直結しているということです。なお法人形態も要注意で、農事組合法人は対象外ですが、株式会社等の営利法人であれば「会社および会社に準ずる営利法人」として対象になり得ます。

補助額とウェブサイト関連費のルール

第20回(2026年)の条件は次のとおりです。

項目内容
補助率2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)
補助上限(通常枠)50万円
インボイス特例+50万円
賃金引上げ特例+150万円
申請受付2026年11月5日〜12月15日 17:00
事業支援計画書(様式4)発行受付締切2026年12月4日

ホームページ制作費は「ウェブサイト関連費」という費目で計上します。制約が2つあります。

  1. ウェブサイト関連費のみでは申請できません。必ず他の経費(広報費、展示会等出展費など)と組み合わせる必要があります
  2. この費目の「補助金交付申請額」の上限は30万円(税込)です

2点目は読み間違えやすい箇所です。上限がかかるのは受け取る補助金の額で、経費の額ではありません。補助率2/3なので、ウェブサイト関連費を45万円計上すれば補助金として30万円を受け取れる計算です。

もう一つ実務的に効く規定があります。ウェブサイトを50万円(税抜)以上で作成・更新した場合、そのサイトは処分制限財産に該当し、通常は取得日から5年間、処分(補助事業目的外での使用・譲渡・廃棄等)が制限されます。承認なく処分すると交付取消・返還命令の対象になり得るため、数年で作り替える前提なら契約前に織り込んでください。

申請の実務(経営計画書の書き方、商工会議所・商工会との進め方)は小規模事業者持続化補助金でホームページを作る完全ガイドに、他制度との比較はホームページ制作の補助金完全ガイドにまとめています。

就農系の支援制度はホームページ制作費には向かない

「新規就農なら補助金でホームページを作れるのでは」と考える方が多いので、ここは正直に書きます。

新規就農者育成総合対策の就農準備資金・経営開始資金は月13.75万円(年間165万円)を交付する資金で、使途を限定してHP制作費を補助する仕組みではありません(就農時に原則50歳未満という年齢要件もあります)。同対策の経営発展支援事業は補助事業ですが、対象は「機械(軽トラ除く)・施設、家畜導入、果樹・茶の新植・改植、機械等リース料等の初期投資的な経費」とされており、ホームページ制作費や広告宣伝費は補助対象経費として掲げられていません(出典: 農林水産省「就農準備資金・経営開始資金」、事業内容は千葉県「新規就農者育成総合対策」の記載による)。HP制作費を狙うなら持続化補助金が本命で、ほかに自治体独自のIT導入・EC出店補助がある場合もあります。

補助金の制度・要件・スケジュールは毎年改定されます。ここに書いた条件は2026年8月時点で第20回公募要領(第8版)を確認したものです。申請前に必ず公募要領の原本と、所管の商工会議所・商工会で最新の条件をご確認ください。

収穫期に更新できない前提で作る運用設計

多くの記事は「コツコツ更新してファンを作りましょう」と書きます。しかし、農繁期に更新が止まるのは意思の問題ではなく構造の問題です。定植・収穫・出荷が重なる時期にホームページを触る余力があるほうが例外です。したがって農家のホームページは、更新が止まっても情報が古くならない構成で設計します。

劣化しない情報と、劣化する情報を分ける

分類例置き方
ほぼ劣化しない生産者紹介・栽培へのこだわり・圃場の風景・アクセス・特商法表記トップと固定ページに置く。年1回見直せば足りる
毎年ほぼ同じ旬のカレンダー・作型・年間の作業サイクル年・日付を書かず「時期」で書く。使い回せる
都度変わる在庫・販売開始・イベント・臨時休業お知らせ欄かSNSに逃がす。トップの主要部分に置かない

やってはいけないのは、トップページの主役に「2026年◯月◯日 販売開始しました」を置くことです。更新が止まった瞬間、そのサイトは放置された農園に見えます。逆に旬のカレンダーと生産者紹介を主役にしておけば、半年更新しなくても情報としては正しいままです。

在庫の表現を「売り切れ」から「時期」に変える

直販ショップ型で最も陳腐化しやすいのが在庫表示です。全商品が「売り切れ」で埋まったサイトは閉業しているように見えます。販売していない期間を「◯月頃から出荷開始予定」という時期の表現に切り替えるだけで印象は変わりますし、旬のカレンダーがあれば訪問者は自分で次に買える時期を判断できます。

年間の更新カレンダー

更新は農閑期・端境期にまとめて仕込みます。

  • 農閑期・端境期:写真の入れ替え、旬のカレンダーの見直し、価格改定、次シーズンの告知を予約投稿
  • 作付け前:今シーズンの作付け品目を反映
  • 収穫・繁忙期:原則として更新しない。お知らせとSNSのみ
  • シーズン終了後:実績の追記、問い合わせで多かった質問をFAQに追加

SNSとホームページの役割を分ける

InstagramやLINEは日々の様子を届けるのに向きますが、料金・規格・出荷時期・法定表示のような「判断に必要な情報」を置く場所には向きません。SNSは流れていく前提、ホームページは残る前提です。SNSで関心を持った人が最後に確認する場所としてホームページを置き、プロフィール欄から必ずリンクしてください。集客全体の設計はホームページ集客の始め方、検索流入を増やす基本はホームページのSEO対策で解説しています。

問い合わせ・注文が来ないときの失敗診断表

作ったのに反応がないとき、いきなりデザインを作り直すのは最後の手段です。まずどの段階で止まっているかを切り分けてください。

兆候考えられる原因最初にやること
アクセス自体がほとんどない地名や品目を含むページがなく検索に引っかかっていない「◯◯市 ◯◯(作物名)」で自分のサイトが出るか確認し、地名を含むページを作る
アクセスはあるがすぐ離脱するファーストビューで何を売っている農園か分からないトップ最上部に「どこで・何を・どう売っているか」を1文で置く
「今買えますか」の問い合わせが多い旬のカレンダーがない、または在庫が売り切れのまま旬のカレンダーを作り、在庫表現を時期に変える
見られているが注文されない価格・送料・配送日の目安が書かれていない価格と送料、届くまでの日数を明記する
卸・取引の相談が来ない規格・ロット・出荷可能時期の情報がない業務用向けページを1枚作る
電話ばかりで手が回らない問い合わせ手段が電話だけフォームとメール、可能ならLINEを追加する
一時的に伸びたが落ちた更新が止まり情報が古いままになっている劣化しない構成に組み替える(前章参照)

表示速度やSEOの基本設定、アクセシビリティといった技術面の状態は品質チェッカーで自動診断できます。ただしこのツールが確認できるのは技術面の項目で、食品表示や特商法の記載が足りているかを点検するものではありません。法令まわりは「注文を受ける・加工するときの手続き」章の公開前チェックリストで手動で確認してください。

公開までの5ステップ

ここまでの内容を、着手順に並べ直します。

STEP1|販路と型を決める(最重要)

自社サイトで売るか、モールに任せて看板に徹するか。そして4つの型のどれを主役にするか。ここを決めずに制作会社へ相談すると、見積もりも要件も定まりません。「ホームページで売るか、産直モールに置いて看板に徹するか」章の5つの質問で決めてください。

STEP2|載せる情報を棚卸しする

必須9項目に沿って、手元にある情報とこれから用意するものを分けます。「加工品を売るか」をここで決めないと、営業許可の要否が後から判明することになります。

STEP3|写真と文章を用意する

制作が止まる最大の原因は素材待ちです。圃場の広がり、作業の手元、パッケージ、出荷の様子を、農繁期に入る前に撮っておきます。文章は完璧を目指さず、こだわりを話し言葉でメモしておけば十分です。

STEP4|手段を選んで形にする

5手段の比較表から、予算・更新頻度・自分で触りたいかで選びます。依頼する場合の進め方はホームページ制作の流れにまとめました。補助金を使うなら発注前に商工会議所・商工会へ相談する順序を守ってください。交付決定前に発注した経費は対象外になるのが原則です。

STEP5|法令チェックをして公開、農閑期に育てる

公開前にチェックリストを通します。公開直後にやることは3つ。Search Consoleへの登録とサイトマップ送信、Googleビジネスプロフィールの整備と公式サイトへのリンク、SNSのプロフィール欄にURLを置くこと。あとは繁忙期は触らず、農閑期にまとめて手を入れる。この運用に落とし込めれば、ホームページは毎年働き続ける資産になります。

よくある質問(FAQ)

農家がホームページを作るには何から始めればいいですか?
デザインや制作会社を探す前に、販路を決めることから始めてください。自社サイトで直接売るのか、モールに出品して販売を任せホームページは信頼の看板に徹するのか、その併用かの3択です。ここが決まると、必要なページも費用も、負う法的義務もすべて決まります。目安として、直販で取りたい売上が全体の3割に満たないなら、まずは販売機能を持たない看板型から始めるのが現実的です。
農家のホームページは自分で作れますか?
作れます。ノーコードツールやAI自動生成サービスなら初期費用0円から5万円、月額0円から5,000円程度で公開まで進められ、旬のカレンダーや出荷状況を自分で直せます。制作会社に依頼する場合はフリーランスで10万円から80万円、中小の制作会社で30万円から150万円が目安です。初期費用ではなく5年間の総額で比べてください。月額8,000円のサービスは5年で48万円になります。
農産物のネット販売には許可が必要ですか?
何をしてから売るかで決まります。自分で生産した農産物を未加工で直売することは、通信販売も含めて農業の採取業の範囲とされ、営業許可も届出も不要です。一方、消費の利便性のために行う調理や切断、つまりカット野菜や千切り、茹で野菜は採取業から外れ、営業届出が必要になります。ジャムや漬物の製造は営業許可の対象です。干し芋や干し柿のような乾燥加工は、自分で生産した農産物を原料にするかぎり届出も不要です。線引きは品目と原料の出どころで変わるため、着手前に必ず所管の保健所へご相談ください。
ホームページに「無農薬」「オーガニック」と書いてもいいですか?
どちらも避けてください。有機やオーガニックという表示は、有機JAS認証を受けていない農産物等には法律で禁止されています。無農薬、減農薬、無化学肥料、減化学肥料は特別栽培農産物に係る表示ガイドラインの表示禁止事項です。消費者が一切の残留農薬を含まない農産物だと受け取り優良誤認を招いていたことが理由です。このガイドラインは通信販売も対象ですが法令ではないため、サイトに書いた瞬間に違法というわけではありません。ただし国が優良誤認を招くと認定した表現である以上、景品表示法のリスクとして考えるべきです。正しい表記は農薬:栽培期間中不使用です。
農家のホームページ制作に使える補助金はありますか?
小規模事業者持続化補助金が最も現実的ですが、農業者には重要な分岐があります。公募要領では系統出荷による収入のみである個人農業者は補助対象にならないと明記され、農事組合法人も対象外です。個人農業者でも農作物の加工や料理の提供等を行う事業については、その加工や料理提供に必要な経費が補助対象になります。つまり直販や加工に踏み出すことが補助金を使う入口条件です。ホームページ制作費はウェブサイト関連費として計上しますが、この費目単独では申請できず、補助金交付申請額の上限が30万円(税込)とされています。制度は毎年改定されるため申請前に公募要領の原本でご確認ください。
食べチョクなどの産直サイトがあれば自分のホームページは不要ですか?
販売だけが目的なら、まずは産直モールで十分です。農家から直接買いたい消費者の検索はモールがほぼ独占しており、自社ECを立ち上げて通販系のキーワードで戦うのは現実的ではありません。ただしモールは販売手数料がかかり続け、顧客データも原則としてモール側に残ります。ホームページはモールの受け皿として、こだわりや生産者の考え方を伝え、リピーターと直接つながる場所です。卸や取材、体験の相談を受ける窓口にもなります。
収穫期で更新できない期間があってもホームページは大丈夫ですか?
更新が止まる前提で設計すれば問題ありません。生産者紹介、栽培へのこだわり、圃場の風景、アクセス、特定商取引法に基づく表記はほとんど劣化しません。旬のカレンダーも年や日付を書かず時期で書けば毎年使い回せます。逆にトップページの主役に日付入りのお知らせを置くと、更新が止まった瞬間に放置された農園に見えてしまいます。在庫が全商品売り切れのまま並ぶのも同じで、販売していない期間は時期の表現に切り替えてください。

まとめ

農家のホームページで結果を分けるのは、デザインの良し悪しよりも先に決める販路の設計です。自社サイトで売るのか、産直モールに任せて看板に徹するのか。ここを決めれば、必要な型も、載せる情報も、かける費用も、負うべき法的義務も自動的に決まります。

直販に踏み込むなら、商品への食品表示、有機JASと特別栽培農産物ガイドラインの表現ルール、景品表示法、特商法に基づく表記、加工品を扱う場合の営業許可が関わってきます。ホームページに全部書く義務があるわけではない一方、書き方を誤ると景表法リスクに直結する表現がある。これがこの分野の実像です。

そして運用は、農繁期に止まる前提で組む。旬のカレンダーと生産者紹介を主役に据え、日付ものはお知らせとSNSに逃がしておけば、半年触らなくても正しいままのサイトになります。まずは自分の型を1つ決めて、必須9項目のうち手元にある情報から並べてみてください。発注先の選び方や費用の全体像はホームページ制作の発注完全ガイドを、料金とプレビューまで無料で試せる範囲は料金ページでご確認いただけます。

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