特定商取引法に基づく表記の書き方|必須項目・テンプレートと個人事業主の住所・電話番号の省略【2026年版】

「ネットショップを開くには『特定商取引法に基づく表記』が必要らしい」「個人事業主だけれど、自宅の住所や携帯番号まで載せないといけないのか」。自分のサイトやオンライン講座で販売を始めるとき、多くの人がここで手が止まります。
表記に載せる項目は、法律と施行規則で細かく決まっています。一方で、住所や電話番号は条件を満たせば省略でき、バーチャルオフィスの住所を使える場合もあります。どこまでが義務で、どこからが選べるのかを知っておくと、必要以上に個人情報を出さずに済みます。
この記事では、特定商取引法(以下「特商法」)の11条と施行規則23条・25条、消費者庁の「特定商取引法ガイド」のQ&Aをもとに、表記に載せる項目、コピペで使えるテンプレート、個人事業主の住所・電話番号の扱いを整理します。条文は e-Gov 法令検索の現行条文(特定商取引法・同法施行規則、2026年9月30日時点)で確認しました。個別の事情によって判断が変わることがあるため、迷う場合は消費者庁や弁護士などの専門家に確認してください。
この記事の要点
- 「特定商取引法に基づく表記」は、インターネットなどで申込みを受けて売る通信販売の広告に、販売条件と事業者情報を表示する義務(特商法11条)に対応するページ
- 載せる項目は、価格と送料・支払の時期と方法・引渡時期・申込みの期間・返品(撤回・解除)の5つ(法11条1〜5号)と、氏名または名称・住所・電話番号などの事業者情報(施行規則23条)
- 個人事業主が氏名を表示するときは戸籍上の氏名(または商業登記簿の商号)を書く。屋号やショップ名だけでは足りない(消費者庁Q&A A16)
- 住所・電話番号は、支払う金額をすべて表示したうえで「請求があれば遅滞なく提供する」と表示し、実際に提供できる体制があれば省略できる(法11条ただし書・施行規則25条2項、消費者庁Q&A A17)
- バーチャルオフィスの住所は、運営事業者との合意・運営事業者があなたの現住所と本人名義の電話番号を把握・確実に連絡が取れるという条件を満たせば使える(消費者庁Q&A A18)。私書箱は不可
- 表記ページだけでなく、注文を確定する直前の最終確認画面にも分量・価格・支払の時期と方法・引渡時期・返品などを表示する義務がある(法12条の6、2022年6月1日施行)
状況別の読み分け早見表
| 当てはまる状況 | 読むところ |
|---|---|
| 載せる項目だけ確かめたい | 必須項目の一覧(条文との対応表) |
| すぐに文面がほしい | コピペで使えるテンプレート、作成ツール |
| 自宅の住所や携帯番号を出したくない個人事業主 | 個人事業主は住所・電話番号を省略できる? |
| 定期購入・講座・デジタル商品を売る | 販売形態別に追加が必要な項目、返品・キャンセル |
| ページは作ったが注文画面が心配 | 表記ページだけでは足りない:最終確認画面の表示 |
特定商取引法に基づく表記とは
特定商取引法に基づく表記とは、通信販売をする事業者が、広告に表示するよう特商法11条で義務づけられている販売条件と事業者情報を、1ページにまとめたものです。ネットショップでは「特定商取引法に基づく表記」「特商法表記」といった名前でフッターからリンクされているのが一般的です。
通信販売なら、ネットショップ以外も対象
特商法の「通信販売」は、郵便やインターネットなどの方法で申込みを受けて行う、商品・特定権利の販売や役務(サービス)の提供を指します(法2条2項、施行規則2条)。インターネット経由の申込みはこの方法に含まれます(施行規則2条2号)。
そのため、対象はいわゆるネットショップだけではありません。たとえば次のような販売も通信販売にあたります。
- 自社サイトでの物販(食品、雑貨、アパレルなど)
- オンライン講座、動画教材、電子書籍、デジタル素材などの販売
- サイトから申し込んで料金を支払うコンサルティングやレッスン
- 月額制のサービスや定期購入
「特定商取引法に基づく表記」というページ名は法律で決まった名前ではありません。法律が求めているのは、通信販売の広告に所定の事項を表示することです。多くの事業者が、その事項を1ページにまとめて各販売ページからリンクする形をとっています。
表示が要らないケース
主に次のような場合は、特商法の通信販売の規定(表示義務を含む)が適用されません(法26条1項)。
| 適用されないケース | 根拠 |
|---|---|
| 購入者が営業のために、または営業として締結する契約(営業目的の契約) | 法26条1項1号 |
| 日本国外にいる人への販売 | 法26条1項2号 |
| 国・地方公共団体が行う販売 | 法26条1項3号 |
適用除外になるかどうかは、相手が事業者かどうかではなく、その契約が買う側にとって「営業のため」かどうかで判断します。販売ページが一般の消費者からも申し込める状態になっているなら、表示を用意しておくのが安全です。
このほか法26条1項には、事業者が自社の従業者に対して行う販売(5号)、弁護士の業務(7号)、金融商品取引法・宅地建物取引業法・旅行業法など他の法律で消費者の利益を保護できる取引(8号)なども挙げられています。該当するかどうかは条文で確認してください。
また、会社案内だけで申込みを受け付けないサイトは、通信販売の広告に当たりません。一方、予約フォームなどで契約の申込みをネットで受けるなら、代金を店頭で受け取る場合でも通信販売に当たることがあります。通信販売かどうかは、代金の払い方ではなく申込みの受け方で決まるからです(法2条2項)。自社がどれに当たるか分からない場合は、ホームページの掲載義務一覧で業種ごとの整理もあわせて確認してください。
必須項目の一覧(条文との対応表)
特定商取引法に基づく表記の必須項目は、法11条1〜5号の販売条件と、法11条6号が委ねている施行規則23条の事項です。施行規則23条は「該当する場合だけ」表示する項目も含んでいます。表の「規則」は施行規則を指します。
| # | 表示する項目 | 根拠 | 必要になる場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 販売価格(役務の対価)。送料が含まれない場合は送料も | 法11条1号 | 常に |
| 2 | 代金(対価)の支払の時期と方法 | 法11条2号 | 常に |
| 3 | 商品の引渡時期(役務の提供時期) | 法11条3号 | 常に |
| 4 | 申込みの期間に関する定め | 法11条4号 | 期間限定の販売など、定めがあるとき |
| 5 | 申込みの撤回・契約の解除に関する事項(返品特約を含む) | 法11条5号 | 常に |
| 6 | 事業者の氏名または名称、住所、電話番号 | 規則23条1号 | 常に |
| 7 | 代表者または通信販売業務の責任者の氏名 | 規則23条2号 | 法人がウェブサイトなどで広告するとき |
| 8 | 外国事業者の国内の事務所等の所在場所・電話番号 | 規則23条3号 | 外国法人・外国在住の個人が国内に事務所等を持つとき |
| 9 | 価格・送料以外に購入者が負担する金銭の内容と額 | 規則23条4号 | 振込手数料・代引き手数料などがあるとき |
| 10 | 商品が契約内容に適合しない場合の販売業者の責任の定め | 規則23条5号 | 定めがあるとき |
| 11 | ソフトウェアやオンライン視聴サービスの動作環境 | 規則23条6号 | デジタル商品・配信サービスなど |
| 12 | 契約を2回以上継続して結ぶ必要がある旨と、金額・契約期間などの条件 | 規則23条7号 | 定期購入・継続契約 |
| 13 | 販売数量の制限など、その他の特別な販売条件 | 規則23条8号 | 条件があるとき |
| 14 | 表示を省略した事項の書面・電子データを請求した人に費用を負担させる場合の額 | 規則23条9号 | 一部を省略し、提供に費用を取るとき |
| 15 | 事業者の電子メールアドレス | 規則23条10号 | 通信販売の電子メール広告をするとき |
表示のしかたにもルールがあります。送料は金額で示すこと、引渡時期は期間か期限で示すこと、返品など撤回・解除の条件は顧客にとって見やすい箇所に明瞭に表示することが求められています(施行規則24条)。
なお、表の1〜5のうち「価格」「支払の時期」「引渡時期」は、表記ページに「各商品ページに記載」と書いて商品ページ側で示す運用が一般的です。広告全体として必要な事項が表示されていればよく、1ページにすべてを集める形式は法律上の要件ではありません。
コピペで使えるテンプレート
特定商取引法に基づく表記のテンプレートは、物販向けとサービス・講座向けの2種類です。上の対応表の項目に沿っているので、[ ]の中を自社の内容に置き換え、該当しない行を削除すればそのまま使えます。
① 物販(ネットショップ)向け
特定商取引法に基づく表記
販売事業者 [株式会社〇〇/個人の場合は戸籍上の氏名]
運営統括責任者 [代表取締役 〇〇 〇〇(法人の場合。代表者または通信販売業務の責任者)]
所在地 [〒000-0000 〇〇県〇〇市〇〇町1-2-3]
電話番号 [03-0000-0000(受付時間 平日10:00〜17:00)]
メールアドレス [info@example.com]
販売価格 各商品ページに記載(表示価格は消費税込み)
商品代金以外の必要料金
送料:[全国一律〇〇円(〇〇円以上のご注文で無料)]
[銀行振込の振込手数料はお客様負担]
[代金引換手数料 〇〇円]
支払方法 [クレジットカード、銀行振込、代金引換]
支払時期 [クレジットカード:ご注文時/銀行振込:ご注文から7日以内に前払い]
引渡時期 [ご注文(前払いの場合は入金確認)から〇営業日以内に発送]
申込みの期間 [期間限定商品は、各商品ページに記載の期間]
返品・交換について
[お客様都合の返品:商品到着後〇日以内・未開封に限り可。返送料はお客様負担]
[不良品・誤配送:商品到着後〇日以内にご連絡ください。送料当社負担で交換または返金します]
② サービス・オンライン講座向け
特定商取引法に基づく表記
役務提供事業者 [〇〇 〇〇(屋号:〇〇デザイン室)]
所在地 [〒000-0000 〇〇県〇〇市〇〇町1-2-3]
電話番号 [090-0000-0000(受付時間 平日10:00〜18:00)]
メールアドレス [contact@example.com]
サービスの対価 各サービスページに記載(消費税込み)
対価以外の必要料金 [銀行振込の振込手数料][インターネット接続に必要な通信料]
支払方法 [クレジットカード、銀行振込]
支払時期 [お申込み時に全額前払い]
提供時期 [お支払い確認後、〇日以内に視聴用URLをメールで送付/初回セッションは日程調整のうえ実施]
動作環境 [推奨ブラウザ:Google Chrome・Safari の最新版]
継続契約について [月額〇〇円(税込)の自動更新。最低契約期間なし。次回更新日の前日までに解約手続きをすれば翌月以降の請求は発生しません]
キャンセル・解約について
[提供開始前のキャンセル:全額返金]
[提供開始後のキャンセル:〇〇の場合を除き返金には応じません]
②のキャンセル・返金の条件は、次の2点に注意してください。講座やレッスンが「特定継続的役務提供」に当たる場合は、「返金には応じません」という条件は使えません(後述の「返品・キャンセル」の項を参照)。また、消費者との契約で平均的な損害を超えるキャンセル料を定めた部分は、消費者契約法9条で無効になり得ます。条件の有効性は、必要に応じて専門家に確認してください。
入力に合わせてこの形の文面を自動で組み立てたい場合は、無料の特定商取引法に基づく表記 作成ツールを使えます。入力内容はブラウザ内で処理され、送信・保存されません。
項目別の書き方と注意点
特定商取引法に基づく表記の各項目には、条文と消費者庁のQ&Aが求める書き方があります。ここでは、テンプレートの項目ごとに、よくある迷いどころを順に説明します。
販売事業者・通信販売業務の責任者
法人は登記簿上の名称、個人事業主は戸籍上の氏名(または商業登記簿に記載された商号)を書きます。消費者庁のQ&Aは、通称や屋号、サイト名のみを表示することは認められないとしています(消費者庁「特定商取引法ガイド」通信販売の広告に関するQ&A A16)。屋号を載せたい場合は「〇〇 〇〇(屋号:〇〇)」のように氏名と並べて書きます。
法人がウェブサイトで広告する場合は、代表者か通信販売に関する業務の責任者の氏名も必要です(施行規則23条2号)。消費者庁のQ&Aは、この責任者は担当役員や担当部長などで、必ずしも代表権を持つ人でなくてよいとしています(同A15)。
所在地
所在地は「現に活動している住所」を書きます(同A17)。法人なら本店の所在地など営業上の活動の拠点で、私書箱は、郵便が届くとしても住所の表示にはならないとされています(同A19)。バーチャルオフィスの扱いは、後の「個人事業主は住所・電話番号を省略できる?」の章(方法2)で説明します。
電話番号
「確実に連絡が取れる番号」を書きます(同A17)。24時間出る必要まではなく、営業時間外は留守番電話などを使ってかまわないとされています(同A20)。受付時間を併記しておくと、問い合わせる側も困りません。
販売価格と送料
送料は「実費」ではなく金額で表示します(施行規則24条1号)。地域や重さで変わるなら、料金表へのリンクや「全国一律〇〇円」「〇〇円以上で無料」のように具体的に書きます。価格が送料込みなら「送料込み」と明記します。
商品代金以外の必要料金
振込手数料、代金引換手数料、分割払いの手数料など、価格と送料以外に購入者が払うお金があれば、その内容と額を書きます(施行規則23条4号)。デジタル商品やオンラインサービスでは、視聴に必要な通信料が購入者負担であることを書いておく例もあります。
支払の時期と方法
支払方法ごとに、いつ支払うのかを書きます。クレジットカードは「注文時」、銀行振込は「注文から〇日以内の前払い」、後払い決済は「商品到着後〇日以内」のようにします。
引渡時期(提供時期)
期間か期限で書きます(施行規則24条2号)。「順次発送」のような書き方ではなく、「入金確認から3営業日以内に発送」「受注生産のため注文から4週間以内に発送」のようにします。オンライン講座なら「決済完了後すぐに視聴可能」など提供のタイミングを書きます。
返品・キャンセル(申込みの撤回・契約の解除)
返品を受け付けるかどうか、受け付ける期間、返送料の負担は、表記と最終確認画面の両方に書きます。特定商取引法に基づく表記の中でも、特に間違えやすい項目です。
商品の販売では、返品についての特約を広告に表示していない場合、購入者は商品を受け取った日から8日以内であれば申込みの撤回や契約の解除ができ、返送費用は購入者の負担になります(法15条の3)。返品を受け付けない、または条件を付けるなら、その内容を表示しておく必要があります。
消費者庁のQ&Aは、「返品についてはその都度御相談に応じます」という書き方では返品特約の表示にならず、返品の可否・期間などの条件・送料負担を明示する必要があるとしています(同A13)。返品を認めない場合は「商品に欠陥がある場合を除き、返品には応じません。」のように書くことを例示しています(同A14)。
また、ネット通販の注文は電子消費者契約にあたるため、返品特約を有効にするには、広告に表示するだけでなく、申込みの操作をする画面(最終確認画面)でも見やすく表示する必要があります(法15条の3第1項ただし書、施行規則44条)。
一方、サービス(役務)には、この8日間の撤回・解除の規定はありません。法15条の3が対象にしているのは「商品又は特定権利」の売買契約だからです。ただし、表示義務(法11条5号)はサービスにもあります。キャンセルや中途解約、返金の条件は、サービスでも表記に書いておく必要があります。
なお、サービスでも、エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介の7つのうち、期間と金額が一定を超える(基準は次の段落)継続契約は「特定継続的役務提供」に当たります(法41条、施行令24条・別表第四)。
この場合は申込みの方法にかかわらず、契約書面を受け取ってから8日間のクーリング・オフ(法48条)と、解約時に請求できる額に上限がある中途解約(法49条)のルールが適用されるため、「返金には応じません」という条件は使えません。基準は、語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介が期間2か月超、エステ・美容医療が1か月超で、いずれも金額5万円超です。
よくある書き間違い
テンプレートを使っても、次のような書き方は表示として不十分になりやすいので注意してください。
| よくある書き方 | 何が問題か | 書き直しの例 |
|---|---|---|
| 販売事業者:〇〇ショップ | 屋号・サイト名のみは認められない(Q&A A16) | 販売事業者:山田 花子(屋号:〇〇ショップ) |
| 所在地:〒000-0000 〇〇郵便局私書箱〇号 | 私書箱は住所の表示にならない(Q&A A19) | 活動拠点の住所、または請求時開示の表示 |
| 送料:実費 | 送料は金額で表示する(規則24条1号) | 送料:全国一律800円(沖縄・離島は1,500円) |
| 発送時期:順次発送 | 期間か期限で表示する(規則24条2号) | 入金確認から5営業日以内に発送 |
| 返品:ご相談に応じます | 返品特約の表示にならない(Q&A A13) | 未使用・到着後7日以内に限り返品可。返送料はお客様負担 |
| 返品:一切不可 | 不良品の場合まで責任を負わないと読める | 商品に欠陥がある場合を除き、返品には応じません |
| 電話番号:非公開 | 省略の要件(金額の全部表示・請求時開示の表示)を満たしていない | 電話番号:請求があった場合には遅滞なく電子メールにて開示いたします |
| 定期コース:初回500円 | 2回目以降の金額・回数・解約条件が分からない | 2回目以降は毎月3,980円、4回の受け取りが条件(総額12,440円)、解約は次回発送の7日前まで |
表の「返品:一切不可」は、商品が契約内容に適合しない場合(不良品など)の責任とは別の話です。消費者庁のQ&Aは、返品特約を契約内容に適合した商品についてのルールとして説明しており、不良品についての販売業者の責任を特約で定める場合は、その内容を別に表示する必要があるとしています(同A13・A14)。
プライバシーポリシー・利用規約との違い
特定商取引法に基づく表記は、プライバシーポリシーや利用規約と混同されがちですが、根拠も役割も別のものです。
| ページ | 主な根拠 | 役割 |
|---|---|---|
| 特定商取引法に基づく表記 | 特商法11条 | 通信販売の販売条件と販売者情報を示す |
| プライバシーポリシー | 個人情報保護法(利用目的の公表など) | 取得した個人情報の扱いを示す |
| 利用規約 | 民法の定型約款などの契約ルール | サービス利用の契約条件を定める |
利用規約に返品条件を書いていても、表記や最終確認画面に返品特約が表示されていなければ、特商法の表示としては不十分になり得ます。販売条件は表記と注文画面に、個人情報の扱いはプライバシーポリシーに、と役割を分けて用意しましょう。サイト全体の注意書きとして置く免責事項の書き方は、免責事項の例文と書き方で解説しています。
個人事業主は住所・電話番号を省略できる?
個人事業主は、支払う金額をすべて表示し、「請求があれば遅滞なく提供する」と書いて実際に応じられる体制を整えれば、住所と電話番号の表示を省略できます。条件を満たすバーチャルオフィスの住所・電話番号を表示する方法もあります。自宅の住所や携帯番号をネットに出したくない場合は、この2つの方法から選びます。
方法1:請求があれば提供する形で省略する
特商法11条ただし書は、請求があれば表示事項を記載した書面や電子データを遅滞なく提供する旨を広告に表示すれば、表示事項の一部を省略できるとしています。どこまで省略できるかは施行規則25条が定めています。
価格や送料などを表示して販売する通常のケースでは、施行規則25条2項のルールで省略します。その場合に住所・電話番号を省略するための条件は、次の3つです(負担すべき金額を全部表示しない場合については、別の定めとして同条1項があります)。
- 購入者が支払う金額をすべて表示していること。販売価格、送料、振込手数料などの負担額を全部表示している場合に、住所・電話番号を含む一定の事項を省略できます(施行規則25条2項)
- 広告に「請求があれば遅滞なく提供する」旨を表示すること(法11条ただし書)
- 実際に請求があったとき、遅滞なく提供できる体制を整えていること。消費者庁のQ&Aは、「遅滞なく」を申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることと説明しています(消費者庁Q&A A17)
あわせて、次の点にも注意してください。
- 省略できない事項があります。返品特約がある場合の返品の可否・期間などの条件・返送費用の負担、価格・送料以外の負担金、動作環境、継続契約の条件などは省略できません(施行規則25条2項)。申込みの期間(法11条4号)も省略の対象外です
- 代金を前払いで受け取る場合の支払の時期、注文後すぐに発送しない場合の引渡時期、契約内容に適合しない商品について責任を負わない場合はその旨も、省略できません(同項ただし書)
- 書面などの提供に費用を取るなら、その額を表示します(施行規則23条9号)
表示例は次のとおりです。
所在地 請求があった場合には遅滞なく電子メールにて開示いたします
電話番号 請求があった場合には遅滞なく電子メールにて開示いたします
この方法は「表示しなくてよい」という意味ではなく、「求められたらすぐに出す」前提の仕組みです。問い合わせ窓口のメールアドレスを必ず表示し、開示の依頼に即日〜翌営業日には返信できるようにしておきましょう。
また、氏名もこの方法で省略できる事項に含まれます(消費者庁Q&A A15)。ただし、販売者の名前がまったく分からないページは購入者に不安を与えます。氏名は表示し、住所・電話番号だけを請求時開示にする形も選べます。
方法2:バーチャルオフィスの住所・電話番号を表示する
消費者庁のQ&Aは、個人事業主がバーチャルオフィスやプラットフォーム事業者の住所・電話番号を表示することについて、次の条件を満たす場合には特商法の要請を満たすと考えられるとしています(消費者庁Q&A A18)。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 合意 | その住所・電話番号を取引の連絡先として使うことについて、あなたとバーチャルオフィス運営事業者の間で合意がある |
| ② 把握 | 運営事業者が、あなたの現住所と本人名義の電話番号を把握している |
| ③ 連絡 | 運営事業者とあなたの間で確実に連絡が取れる状態になっている |
プラットフォーム事業者の住所を表示する場合は、これに加えて、その取引がそのプラットフォーム上で行われていることが条件です。
同じQ&Aは、個人事業主・プラットフォーム事業者・バーチャルオフィス運営事業者のいずれかが不誠実で、消費者から連絡が取れないなどの事態が起きた場合には、表示義務を果たしたことにならないとしています。バーチャルオフィスを選ぶときは、郵便物の転送や電話の取次ぎが確実に行われるか、契約内容で確かめておきましょう。
なお、住所や電話番号を省略・代替できるかどうかは、販売ページの表示だけでなく、その後の対応まで含めて判断されます。表示をどうするかと同時に、連絡を受けたら確実に応じる運用を決めておくことが大切です。
表記ページだけでは足りない:最終確認画面の表示
2022年6月1日に施行された改正特商法で、注文を確定する直前の画面(最終確認画面)にも表示義務ができました(法12条の6)。消費者庁は、これを受けて「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」を公表しています。
最終確認画面に表示する事項は次のとおりです(法12条の6第1項)。
- 商品・サービスの分量(数量、回数、期間など)
- 法11条1〜5号の事項:価格と送料、支払の時期と方法、引渡時期(提供時期)、申込みの期間、申込みの撤回・解除
また、その操作が申込みになることを誤認させる表示や、これらの事項について誤認させる表示は禁止されています(法12条の6第2項)。定期購入なのに1回だけの購入と誤認させる画面が典型例です。
この義務は、特定商取引法に基づく表記のページを用意していても免除されません。Shopify や BASE などのカートを使う場合も、最終確認画面に返品条件や定期購入の条件がきちんと表示されるか、実際に注文画面を開いて確かめてください。違反した場合の扱いは、後の「表示しないとどうなるか」で説明します。
販売形態別に追加が必要な項目
基本の項目に加えて、売るものによって次の項目が必要になります。
| 販売形態 | 追加で確認する項目 | 根拠 |
|---|---|---|
| 物販(受注生産・予約販売を含む) | 送料の金額表示、引渡時期の期間・期限、返品特約 | 法11条1号・3号・5号、規則24条 |
| サービス・講座・コンサル | 提供時期、キャンセル・中途解約・返金の条件(法15条の3の8日間撤回はない。特定継続的役務提供に当たる場合は別ルール) | 法11条3号・5号、法15条の3、法41条 |
| デジタル商品・動画配信・アプリ | 動作環境(対応OS・ブラウザなど) | 規則23条6号 |
| 定期購入・サブスクリプション | 2回以上継続する旨、各回と総額の目安、契約期間、解約方法 | 規則23条7号、消費者庁Q&A A21 |
| 期間限定・数量限定 | 申込みの期間、販売数量の制限 | 法11条4号、規則23条8号 |
| メールマガジンで販売を案内 | 事業者の電子メールアドレス | 規則23条10号 |
期間の定めのない定期購入では総額が出せないため、消費者庁のQ&Aは、半年分・1年分などの購入価格を目安として示し、それが契約期間ではないことを明確にする方法を例示しています(同A21)。
どこに載せるか
特定商取引法に基づく表記は、フッターに「特定商取引法に基づく表記」のリンクを置き、全ページから開けるようにするのが一般的です。あわせて、次の場所からたどれるようにしておくと安心です。
- 商品ページ・サービスページ
- カート画面と最終確認画面
- 購入完了メール
販売ページの情報設計全体はホームページの構成ガイド、ネットショップの立ち上げ手順はECサイトの作り方で解説しています。
ホームページがまだなら、完成形を先に下見する
シタミなら、業種と好みを選ぶだけで、お問い合わせとプライバシーポリシーまで入ったホームページを、実物のURLで下見できます。特定商取引法に基づく表記は、この記事のテンプレートや作成ツールで用意してください。下見までは無料です。
表示しないとどうなるか
特商法11条の表示義務に違反しても、原則として、それだけで直ちに罰則が科されるわけではありません。ただし、次のような流れで行政処分や罰則につながります。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 指示 | 違反の是正などの措置をとるよう指示される | 法14条 |
| 業務停止命令 | 2年以内の期間を限り、通信販売の業務の全部または一部の停止を命じられる | 法15条 |
| 指示に違反 | 6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり) | 法71条2号 |
| 業務停止命令に違反 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)。法人は3億円以下の罰金 | 法70条3号、法74条1項1号 |
一方、最終確認画面の表示義務(法12条の6第1項)への違反は、指示などを経なくても罰則の対象です(法70条2号)。誤認させる表示の禁止(同条2項)への違反も同様です(法72条1項4号)。
このほか、著しく事実に相違する表示や、実際よりも著しく優良・有利であると誤認させる広告も禁止され、罰則があります(法12条、法72条1項1号)。同意を得ずに電子メール広告を送ったうえで、そのメールに11条の表示をしなかった場合も、直接の罰則があります(法72条2項)。
罰則以上に現実的なのは、表示がないことで購入をためらわれたり、返品特約を表示していなかったために、受け取りから8日以内の返品に応じざるを得なくなったりすることです。表記は購入者のためだけでなく、販売者を守るための仕組みでもあります。
表記を公開する前のチェックリスト
- 販売者名が法人なら登記簿上の名称、個人なら戸籍上の氏名または商業登記簿の商号になっている(屋号のみになっていない)
- 法人の場合、代表者または通信販売業務の責任者の氏名がある
- 住所は現に活動している住所か、条件を満たすバーチャルオフィスの住所になっている(私書箱ではない)
- 住所・電話番号を省略する場合、支払う金額をすべて表示し、「請求があれば遅滞なく提供する」旨を書いている
- 送料が金額で書かれている
- 引渡時期(提供時期)が期間か期限で書かれている
- 返品・キャンセルの可否、期間、送料負担が書かれている
- 定期購入・継続契約なら、その旨と金額・期間・解約方法が書かれている
- デジタル商品なら動作環境が書かれている
- 最終確認画面に、分量・価格・支払の時期と方法・引渡時期・申込みの期間・返品条件が表示されている
- 継続する講座やレッスンが特定継続的役務提供に当たらないか確認している
- フッターなど全ページからリンクされている
問い合わせフォームや会員登録で個人情報を受け取るなら、個人情報保護法が求める利用目的の公表なども必要になり、プライバシーポリシーとしてまとめて掲載するのが一般的です。書き方はプライバシーポリシーの雛形と書き方を参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
個人事業主でも特定商取引法に基づく表記は必要ですか?
自宅の住所や電話番号を載せたくない場合はどうすればよいですか?
バーチャルオフィスの住所を表示してもよいですか?
返品を受け付けない場合も表記に書く必要がありますか?
サービスやオンライン講座にもクーリング・オフのような8日間の返品ルールはありますか?
事業者向けにだけ販売する場合も表示は必要ですか?
まとめ:条文の項目を埋め、最終確認画面まで確かめる
特定商取引法に基づく表記は、法11条の5項目と施行規則23条の事業者情報を、販売形態に合わせて漏れなく表示するためのページです。
- 必須項目の対応表と販売形態別の表で、自社に必要な項目を洗い出す
- テンプレートか特定商取引法に基づく表記 作成ツールで文面を作る
- 個人事業主は、住所・電話番号を「請求時に遅滞なく開示」にするか、条件を満たすバーチャルオフィスを使うかを決める
- 最後に、実際の注文画面で最終確認画面の表示を確かめる
業種によっては、特商法以外にもホームページに載せる項目が決められている場合があります。ホームページの掲載義務一覧もあわせて確認してください。